健康や美容のためにも、積極的に摂りたい野菜。ただ、野菜料理に物足りなさを感じる人もいるのでは?満足度の高い野菜料理を楽しみたい人は、イタリアンに挑戦してみてはいかがでしょうか。イタリア在住の筆者が、本場イタリアの野菜事情や、多彩なベジメニューを紹介します。

おいしいだけじゃない!ヘルシーなイタリア料理

パンと野菜、オリーブオイルとビネガーでシンプルに楽しむ夏の定番パンツァネッラ

イタリア料理というと、カルボナーラやピッツァなど高カロリーの料理を思い浮かべる人が多いのでは?そのイタリア、実は日本と同じような長寿国。イタリア料理は決して不健康な料理ではないのです。

イタリアは長寿国!

日本は世界一の長寿国。外務省の統計では、日本の平均寿命は84.26歳。一方イタリアは、世界第8位で82.97歳という平均寿命を誇ります。

長寿であるだけではなく、健康な人が多い地域「ブルーゾーン」に選出される実績も。世界には5大ブルーゾーンがあり、日本の沖縄とイタリアのサルデーニャ島も含まれています。

地中海式食事法のメリット

イタリア料理は、「地中海式食事法」のひとつとして、ユネスコ世界無形文化遺産となりました。現在、「イタリア料理」単体でも申請中です。

気候に恵まれたイタリアは、新鮮でおいしい食材そのものが豊富。手を加えなくても、シンプルにおいしく、ヘルシーな食事ができるというメリットがあります。

基本となるのはオリーブオイル、野菜、フルーツ、豆類、パスタやパンなど。肉や魚は少量、適量の赤ワインも定番です。

また、化学調味料が少なく、基本の味つけはオリーブオイルと塩、酢、ハーブやスパイスのみ。味つけは各家庭ごとに異なりますが、それこそが「マンマの味」として長寿を支えているのかもしれません。

土壌や気候が異なる南北に長いイタリアは、地産地消をベースにした郷土料理も多数。健康だけではなく、環境にも優しい食事情が特徴です。

野菜をもりもり食べる!イタリア人のライフスタイル

イタリアの市場は量り売りが基本。キロ単位で買う人が多数

市場で量り売りの野菜を購入し、旬の味わいを楽しむ。ベジタリアンやヴィーガンでなくても、イタリア人には野菜を食べる習慣が根付いています。

青空市場が大好きなイタリア人と野菜の関係

イタリアでは生産者から直接購入する青空市場が人気

イタリア自作農総連合会(Coldiretti)の報告によると、イタリア人の3人に2人は、日常的に農家直営青空市場で買い物をしています。週末には家族や友人と市場に出かけ、にぎやかにおしゃべりをしながら食材を調達します。

イタリアの買い物は量り売りが基本。必要に応じた量を購入できるため、フードロス対策にもなるのがメリットです。

購入する野菜の量は膨大!たとえばインゲンマメを「家族3人分ちょうだい」と言うと、たいていは600gほどを袋に入れてくれます。

青空市場では、基本的に旬の食材しか売っていません。種類は少なくても、大量の野菜を購入し、食べるのがイタリア流です。

レストランでよく目にする「V」はベジタリアンメニュー

イタリアのレストランのメニューにある「V」は、ベジタリアンメニューの略。レストランによっては、ベジタリアンだけではなくヴィーガンメニューを用意しているところもあります。

朝食をとるためにバールに行くと、「ヴィーガンタイプ」のクロワッサンがあり、ヴィーガン以外の人も好んで食べるほど人気があります。

イタリア国内でベジタリアンは7%、ヴィーガンは2%。数値は決して高くありませんが、野菜を使ったおいしいメニューが多く、ごく自然に野菜を食べるという習慣がついています。

こんなにあるある!イタリアンのベジメニュー

トマトソースとチーズがあればおいしいパスタが完成!

旬の食材をシンプルに食べるのがイタリアンの王道。身近な野菜を使ってできるメニューのいくつかを紹介します。

トマトベースのパスタ

イタリアンといえば、トマトを使ったメニュー。

オリーブオイルとの相性がよいトマトをベースにしたパスタは、イタリアではお茶漬け感覚で気軽に食べるものです。

もっともシンプルなタイプは、たっぷりのオリーブオイルに缶詰のトマトを加え煮詰めたもの。味つけは塩と仕上げに載せるチーズのみです。ロングパスタとショートパスタでは食感も違うので、お好みのパスタで楽しめます。

ベースにするトマトソースは、ニンニクで風味づけをしたり、バジルを加えたりすることで、また別のバージョンが生まれます。

トマトベースのベジタリアンパスタはほかにも、次のようなものがあります。

・揚げたナスとリコッタチーズを加えた「アッラ・ノルマ」

・フードプロセッサーで粉砕したバジルの葉とアーモンドを加える「アッラ・トラパネーゼ」

・唐辛子とイタリアンパセリで風味をたのしむ「アッラビアータ」

加える具材によってトマトソースの味が変わるため、飽きることなく食べられますよ。

チーズ風味のパスタ

濃いめの味を楽しみたいときは、チーズをベースにしたパスタがおすすめ。イタリアンチーズの代表格、パルミジャーノチーズは繊細な味わいなので、塩気のきいたペコリーノチーズや、くせのあるゴルゴンゾーラでアクセントを。

いくつか例を挙げてみましょう。

・ローマのペコリーノチーズと黒コショウで味つけした「カーチョ・エ・ペーペ」

・茹でたブロッコリーをつぶしてチーズで味つけした「ブロッコリ」

・炒めたパプリカをフードプロセッサーで粉砕、チーズを絡めた「クレーマ・ディ・ペペローニ」

・バジルの葉、松の実、を粉砕してオリーブオイルとチーズでたべる「アッラ・ジェノヴェーゼ」(本場ではよく茹でたインゲンマメとジャガイモが加えられています)

・ゴルゴンゾーラチーズとクルミを組みあわせた「ゴルゴンゾーラ・エ・ノーチ」

野菜が苦手な人は、チーズの風味で食べやすくなります。

その他のベジタリアンメニュー

冷蔵庫に食材がないときは、ニンニクと唐辛子と塩だけで食べるパスタ「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」があります。これだけで物足りない場合は、パン粉を煎って載せると、香ばしい匂いと増量感がプラス。ズッキーニや水菜やホウレンソウを足せば、ベジタリアンメニューになります。

イタリアでは豆の出番も多く、レンズマメやひよこ豆、うずら豆のスープは冬の食卓の定番。子どもがいる家庭は、ミニパスタを加えて食べやすくします。

リゾットは北イタリアの郷土料理。オリーブオイルだけではなく、バターと相性がよく、グリーンピースやカボチャ、キノコやビーツを具材にします。米はライスコロッケにすることも多く、トマトソースを絡めた米を丸めて中にモッツァレラチーズを投入し揚げます。揚げたてはチーズが伸びて最高のおいしさです。

ピッツァにもベジタリアンメニューが多く、トマトソースとモッツァレラチーズがたっぷりのった「マルゲリータ」が有名です。オリーブやオレガノがトッピングされたピッツァは、おやつにも向いています。

野菜を細かく刻んでトマトソースで煮込み、チーズをかけて食べる「ミネストローネ」は、日本のお味噌汁感覚でいただけるメニュー。心も体もあたたまる一品です。

イタリアンのベジメニューは多彩。新鮮な野菜とシンプルな味つけで、飽きのこない本格的なイタリア料理が楽しめます。マンネリ化しがちな毎日の食卓に、ぜひ活用してください。
 

参照元:

世界保健機関「Increasing fruit and vegetable consumption to reduce the risk of noncommunicable diseases」

農林水産省「野菜・果物をとろう」

厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要」

FONDAZIONE DIETA MEDITERRANEA「Dieta Mediterranea e stile di vita sano per una longevità in buona salute」

WWF「Vegan Day, il 59% degli italiani sta riducendo il suo consumo di carne

Coldiretti「Consumi: gli italiani scelgono i mercati contadini」

Governo Italiano 「La Cucina Italiana Candidata a Patrimonio UNESCO」

農林水産省「【参考】Food-based dietary guidelines(地中海食に関する部分)」

外務省「平均寿命の長い国」

沖縄県医師会「世界5大長寿地域『ブルーゾーン』と呼ばれた沖縄」

ライター

cucciola

ヨーロッパの片田舎で家族と3人暮らし。

学生時代に都会の生活で心を病んで以降、スローライフとスローフードで心身の健康を維持。気が向くまま、思いつくまま、風まかせの旅行が多数。

アートと書籍を愛するビブリオフィリアで1人の時間が大好き。