お鍋に欠かせない豆腐。手ごろでタンパク質が豊富な食材ですが、意外と奥深いものです。安価なものと高めのものは何がちがう?絹ごしともめん、どう選ぶ?添加物って?そのほか、気になる豆腐のこと、特性を活かしたレシピを紹介します。
知ってる?豆腐のおさらい
豆腐を買うとき、どのように選んでいますか?スーパーマーケットの豆腐売場には、有名メーカーや地元の手づくり豆腐など、いろいろな種類が並びます。選ぶ前に、まずは豆腐についておさらいしておきましょう。
豆腐のルーツ
2000年以上前に中国で最初に作られたと伝えられています。「納豆と豆腐とは名前を入れ違えられた」という説が有名ですが、これは間違い。納豆は日本で命名された日本古来の食品といわれます。豆腐の「腐」は中国では「やわらかいもの」を表しているようです。
絹ごしorもめん
豆腐の絹ごしともめんの区別は、実際に絹やもめんの布で濾しているわけではなく、食感のなめらかさ、粗さからきています。絹ごしは豆乳に直接“にがり”を加えて固めたもので、もめんは固めた豆腐を崩して圧力をかけ、水分を抜いて作られます。
絹ごし豆腐の特徴(もめん比)
- なめらかな口あたり
- やわらかい
- 水分を多く含む
- カリウムを多く含む
もめん豆腐の特徴(絹ごし比)
- しっかりした食感
- かため、煮崩れしにくい
- 水分少なめ
- カリウムは水分と一緒に抜けるため少なめ
- 栄養価は高め(カロリーも高め)
日本各地のご当地豆腐
沖縄島豆腐
関東でもパックの「島豆腐」が売っていますが、もともと沖縄では「あちこーこー」といって、作りたての熱々で袋に入れられ販売されていました。にがりを入れる前のやわらかい「ゆし豆腐」も沖縄のソウルフードです。
日本復帰で食品衛生法が適用され、水にさらしての販売が義務化。地元では消費期限を1日にするなど対応を迫られます。さらに衛生管理法「HACCP」の施行で「温度が55℃になってから3時間以内に消費または冷蔵保存」が義務化されると、後継者不足もあり「あちこーこー」は製造・販売がさらに減少しました。
土佐田舎豆腐
土佐田舎豆腐は戦国時代に韓国から製法が伝えられたとされています。高知県の山間部で生産が続けられてきた、島豆腐と同様のかたい豆腐です。煮物・炒め物・白あえがよくあいます。味噌とみりんで漬ければチーズのような濃厚な味わいが楽しめます。
参考:農林水産省
京都嵯峨豆腐
京都の老舗豆腐店「森嘉(もりか)」で作られている、もめんと絹ごしの中間くらいのなめらか食感の豆腐です。戦時中に「にがり」(塩化マグネシウム)が不足したため、もともと中国で使われていた「すまし粉」(硫酸カルシウム)を代用したところ、なめらかな豆腐ができあがったということです。
豆腐の一丁・二丁には大きさや重さの目安ではなく、豆腐を数える時の個数です。一般的には300〜400gですが、地域によって差があります(沖縄では約1kg)。申し訳ございません!以前筆者もレシピで1/2丁などと表記してしまいました。以後グラム表記にさせていただきます。
豆腐の加工品・関連品
油揚げ
薄く切った豆腐を揚げたもの。新潟「栃尾揚げ」のような厚い油揚げは、厚めに切った豆腐を低温・高温で、串で油を抜きながら内部まで揚げていきます。
厚揚げ・生揚げ
厚めに切った豆腐の表面だけを揚げ、豆腐の食感を残したもので、通常もめん豆腐を使います。自宅で作る際は約170℃で8〜10分で揚がります。よく水を切って油はねに十分注意してくださいね。揚げたてはおいしいですよ!
湯葉
豆腐のように凝固剤は入れず、濃いめの豆乳を沸かし、表面にできたタンパク質・脂質の膜をすくってできるものが湯葉です。生湯葉は刺身のようにわさび醤油で、乾燥湯葉は湯葉まきなどで食べられています。自宅でも濃いめの豆乳が手に入れば作れます。(ただし想像以上に時間がかかります!)
高野豆腐|凍み(しみ)豆腐
「高野」は西日本、「凍み」は東北を中心に呼ばれています。総称して「凍り(こおり)豆腐」とも。どちらが先かは不明ですが、いずれもはじまりは鎌倉時代ごろのようです。高野豆腐は、凍らせた豆腐を湯で溶かし、しぼって調理されていました。凍み豆腐は藁で吊るした豆腐を夜間に凍らせ、昼間の陽光で溶かす、を繰り返して乾燥させ、保存食としていたようです。
豆腐の栄養価
豆腐には豊富なタンパク質が含まれています。そのほか、カリウム・カルシウム・レシチン・サポニン・大豆イソフラボンなど、栄養が豊富。カリウムは、もめんに対し絹ごし豆腐では約30%高くなります。水溶性ビタミンも水分と一緒に流出しますが、そのほかの栄養分は、水分が少ない分、もめんの方が高くなります。
豆腐の栄養価(出展:食品成分データベース|文部科学省)
豆腐のパッケージはここを見て!
上記はスーパーで購入した2種類の豆腐のパッケージ表記です。「原産地」「添加物」そして「遺伝子組み換え」というのもちょっと気になりますよね。表記内容の読み解き方をご紹介します。
原料原産地
①の豆腐は国産、②はアメリカ・カナダ産です。やっぱり国産の方が安心?と考えがちですが、農薬や添加物の残留基準はどちらも同じと考えて大丈夫というのが筆者の見解です。
添加物
凝固剤とは「にがり」のこと。通常、塩化マグネシウム(合成品)が使用されますが、①は海水から塩化ナトリウム(塩)などを取り除いた、粗製海水塩化マグネシウムが使われています。
消泡剤とは、大豆を煮るときに発生する、サポニンによる泡を消すための薬品です。グリセリン脂肪酸エステルやシリコーン樹脂系のものが使われますが、これらは製品には残らないため、本来表示義務はありません。消泡剤を使わない豆腐は、手作業で灰汁を取り除くなどの手間をかけて作られています。
遺伝子組み換え大豆について
国内では、遺伝子組み換え作物の輸入はされているものの、栽培は許可されていません。①は国産なのでほぼ間違いなく「遺伝子組み換えでない」といえます。かたやアメリカでは、大豆の90%以上が「遺伝子組み換え」と考えられます。
②の「分別生産流通管理済み」という表記は、各サプライチェーン拠点において「遺伝子組み換え大豆を意図的混入がないよう分別管理している」ということ。以前は遺伝子組み換え品が5%以内であれば、「遺伝子組み換えでない」との表示をしてもOKでしたが、現在は100%組み換えでないことが明確でなければ表示できなくなりました。
パッケージ表記のまとめ
①は②の約3倍の価格です。国産大豆と天然にがりを使用し、消泡剤不使用で手間がかけられていることで高価になっています。豆腐を題材に、添加物や遺伝子組み換え、それにともなう価格や味について、考えてみるのもいいかもしれませんね。
食感を活かした豆腐レシピ
冷やっこなら絹ごし、煮物はもめん、炒めるなら堅豆腐など、料理によって使い分けられる豆腐。崩さない配慮からという理由も多いと思います。ぜひ、豆腐を主役に、十分なスペースと使いやすい豆腐すくいを準備して、大事にていねいに調理してみませんか?
チーズに負けない「絹ごしのカプレーゼ」
ちょっぴり高級な豆腐を使ってみましょう!それでもモッツァレラチーズに比べて値段は約1/5、カロリーも1/2以下とサイフにもカラダにもやさしい一品です。そのままでは崩れやすくやや水っぽくなってしまうので、よく水切りするのがポイントです。
材料(2人分)
- 絹ごし豆腐 200g
- トマト 大1個
- 大葉 2枚
- オリーブオイル 小さじ2
- 塩 豆腐水切り用 小さじ1 味付け用 小さじ1/2
つくり方
- 豆腐の全面に塩をまぶし、キッチンペーパーでくるむ
- 油切りバットなどに豆腐をおいて、重しを乗せる(あまり重すぎると豆腐がつぶれてしまうので注意)
- 冷蔵庫で6時間から半日程度おいておく(1~数回キッチンペーパーを交換)
- トマトと豆腐をスライスして皿に並べる
- オリーブオイルと塩をかけ、粗みじんにした大葉をのせてできあがり
あら不思議!よく水切りした豆腐はとても濃厚でチーズに近い食感になります。水切り用の塩はほとんど水分と一緒に出てしまいますのでいい塩梅(あんばい)に仕上がります。あらかじめトマトはスライスしておき、豆腐を1枚切って包丁に乗せたまま、その上にトマトを乗せ、皿にそっと並べていくと崩れにくくなりますよ。
豆腐が主役「絹ごしの湯豆腐&温やっこ」
材料(湯豆腐・温やっこ各1人分)
- 絹ごし豆腐 200g
- 干しシイタケ 2本
- 干しシイタケもどし用水 400ml
- 切干しだいこん 10g
- 切干しだいこんもどし用水 100ml
- ねぎ 1/2本
- だいこん 1/4本
- こんぶ 小1枚
- 顆粒かつおだし 小さじ1
- 料理酒 小さじ1
- みりん 小さじ1
- 【温やっこ用】かつおぶし(お好みで)大さじ1
- 【温やっこ用】だいこんおろし 大さじ2
- 【温やっこ用】しょうゆ 少々
つくり方
- 干しシイタケを水でもどす(できれば6〜12時間)
- 切干しだいこんを水でもどす(約10分)
- 干しシイタケのもどし水、切干しだいこんのもどし水、水を計500mlにしてこんぶを入れ、約60℃で20分煮出す
- ねぎを3cmのぶつ切り、だいこんを1cmのいちょう切り、干しシイタケに切り込みをいれる
- 豆腐以外の材料・かつおだし・料理酒・みりんを鍋に入れ、一旦沸騰させてからふたをして弱火で15分煮る
- 豆腐を入れて約10分あたためてできあがり
※まずは湯豆腐で・・・れんげで出汁といっしょにつるりと食感を楽しんでください。
続いて温やっこで。だいこんおろし・かつおぶし・しょうゆを少々かけてどうぞ!ワンポイント
絹ごしは、食感をあじわう豆腐です。崩さないように丁寧に、加熱は短時間にするのがおすすめです。湯豆腐~温やっこの順に紹介しましたが、お酒を飲むら逆もGOOD!自由にアレンジしてみてましょう。
ガッツリ派も満足「もめん豆腐の肉あんかけ」
ヘルシーな豆腐ですが、ガッツリいきたいなら相性抜群の豚バラ肉のご準備を。豆腐も豚バラも大きく切って食べごたえをだしましょう。丼ものにしてもおいしいですよ。
材料(2人分)
- もめん豆腐 250g
- 豚バラ肉(ブロック)150g
- ねぎ 1/2本
- だいこん 1/3本
- 干しシイタケ 3本
- 干しシイタケもどし水 400ml
- こんぶ 小1枚
- 薄口しょうゆ 大さじ1
- かたくり粉 大さじ2
- 水溶きかたくり粉用水 大さじ2
- 砂糖 小さじ1
- 酢 小さじ1
- にんにく 1/2かけ
- 塩 小さじ1/2+小さじ1/2調整用で準備
- 花椒(ホアジャオ|なければ山椒又は黒コショウ) ひとつまみ
- 輪切り唐辛子 ひとつまみ
つくり方
- 干しシイタケを水でもどす(できれば6〜12時間)
- 干しシイタケのもどし水にこんぶをいれ、400mlになるよう水を足し約60℃で20分煮出す
- 豚バラ肉を1cm幅に切り、砂糖をもみ込み30分くらい冷蔵庫においておく
- 豆腐は大きめにちぎっておく
- だいこんは乱切り、ねぎは3cm幅のブツ切り、干しシイタケは4等分に切る
- 豚バラ肉を焼き、油がでてきたらにんにく・唐辛子を加え弱火で香りを出す(焦がさないように注意)
- 余分な油をキッチンペーパーで拭きとりながら肉を焼き、両面色がかわったら豆腐以外の具材を入れて炒め合わせる
- 鍋にこんぶだしを加え、沸騰したら火を弱めてアクをとり、豆腐・塩・薄口しょうゆ・花椒をいれて15分煮る
- 味をみて塩を足し、弱火にして水溶きかたくり粉をゆっくりいれる
- 強火にしてとろみがでてきたら酢を入れてできあがり
もめん豆腐は手でちぎると味ののりがよくなりますよ。少し煮込んで豆腐の味しみを楽しんでください。豆腐を入れてからは、かき混ぜすぎて崩れないようご注意を!
目にも麗しい「もめん豆腐のせいろ蒸し」
人気のせいろ蒸しも豆腐でトライ!せいろに少々身構えてしまうかもしれませんが、実はとても簡単なのです。洗いものが少ないの魅力です。カンタン・ヘルシー・おいしい、そして達成感のある料理です。
材料(2人分)
- もめん豆腐 200g
- 豚バラ肉うす切り 150g
- ほうれん草 3株
- しいたけ 2本
- かつお節 大さじ1
- 塩 ひとつまみ
- たれ お好みで (写真はハラペーニョピクルス&オリーブオイルとピンクソルト&ごま油)
つくり方
- 豆腐は約6cm角に、しいたけはうす切り、ほうれん草と肉は食べやすい大きさに切る
- せいろにクッキングペーパーをしき、具材を詰める(肉はほうれん草の上に)
- 豆腐と肉に塩をふり、豆腐にかつお節を乗せる
- せいろのふたを閉めて、沸騰した鍋の上におく(やけどに注意)
- 15分蒸したらできあがり!そのままふたを開けて食卓へ
さっぱりしているのでオリーブオイルやごま油のタレがよくあいます。もちろんわさびしょうゆやポン酢もいけますよ。せいろは汚れがついていなければ、軽く水洗いしてふきんやキッチンペーパーで拭き取ればOK。風通しのよいところで乾燥させましょう。マグネットフックなどでぶら下げておければベターですね。
ライター
Maita
アウトドア大好きなフリーランスのフードコーディネーター(FCAJ認定/1級)&Webデザイナー。こだわって作った『つくりおき料理』で楽しいキャンプ飯を考案。また、日本各地の固定種・在来種の食材を使った料理を手掛け、地域の食文化の継承を模索している。一人でも家族でも仲間でも楽しめる、そして地球にやさしいレシピを提案していく。