「自分のために、子どものために」始めた親子登山
-自己紹介をお願いします。
私は主に住宅設計をしている建築士です。
子どもは7歳になる双子の女の子で、かの・りのです。今年、小学校1年生になりました。赤ちゃんのときからよく動く2人だったので、インスタでは、ちっちゃな怪獣の意味をこめて『ふたごん』の愛称で呼んでいます。
-ふたごんとはかわいい愛称ですね。Nanaさんの登山歴はどのくらいになりますか?
登山は大学院卒業のとき、富士山に登ったのをきっかけに14年続けています。
-14年とは長いですね。娘さんたちを山へ連れていこうと思ったきっかけを教えてください。
「親子でも登れるかな?」と思って、自分のためにも、子どもたちのためにも親子登山を始めました。
-自分のためにも、子どものためにもとはどのようなことでしょう?
独身時代は、休日のすべてを登山にかけていたほど山登りにハマっていたんです。その一番楽しんでいるときに妊娠し、山をお休みしなくてはならなくなりました。
子どもたちが1歳半のときに仕事に復帰しましたが、仕事・家事・育児が重なって、間違いなく人生で一番しんどかった期間といえます。
-出産と育児は女性にとって大変な時期です。仕事にも復帰されたんですね。
はい。そんなしんどかったとき、インスタでつながった山ママたちがベビーキャリアで子どもと山へ行くのを見て、すごくうらやましかったんですね。ひとりで2人を連れていくなんて、そのときは考えられなかったので。
それで、双子を出産後は家族協力のもと、ひとりで日帰り登山をしてリフレッシュしていたんです。登山口で授乳して、次の授乳までの間に登っておりてくるという、2時間ほどのハイク……。それでも今までにない感動がありました。
-育児中は、ちょっとでも自分だけの時間があると救われたのではないでしょうか?
そうなんです。最初は自分の時間をもつことなど考えられませんでしたが。
しかも仕事と家事に追われていると、子どもと過ごす時間が減っていて……。働きたい気持ちと、子どもと触れ合いたい気持ちとでバランスをとるのが難しかったんです。
-働くお母さんに共通する悩みですね。
その後、夫の単身赴任で完全ワンオペ育児になったことで、子どもたちを預けて山に登りにくくなってしまったのもあって。
「ひとりで行けないなら、子どもを連れていけば誰にも迷惑をかけない!」ということで、3人で一緒にいろんなところを登るようになりました。山に行きたい気持ちが勝ったんですよね(笑)
子どもたちにも保育園ではできないことを、週末だけは思いっきりやらせてあげようと思ったのもきっかけです。
ベビーキャリアなしで親子登山を楽しむコツ
-ひとりで双子ちゃんを山へ連れていくなんてガッツがありますよ。どのくらいの時期から親子登山を始めたのでしょう?
まずは子どもが歩けるようになってから、近所の裏山の緑道などを散歩しました。自然のなかを自力で歩くことを覚えさせるために。
山歩きの練習をして、しっかり歩けるようになった2歳半頃から、親子登山をスタートしました。不安定な道も歩けたのは、散歩によるトレーニングの成果があったからだと思います。
-双子ちゃんだと登山でベビーキャリアが使えないので、事前に子どもたち自身の力を伸ばしてあげたんですね。
双子なので抱っこをあまりしなかったこともあり、「山でも抱っこしない」というのを2人とも理解してくれました。ぐずぐずはしますが、よっぽどのことがないと、「抱っこ抱っこ」にはなりません。
-上手にステップアップされた成果だと思います。
でも、実は子どもが1歳のときに高尾山にトライしましたが、薬王院にすらたどりつけずリタイアしたんです。今思うと、コミュニケーションがしっかりとれるようになった2歳半頃が、親子登山スタートには適していたのかもしれません。
それからは徐々に歩ける距離や標高差を上げていって、子どもが4歳になった頃には、本格的に山に登り始めました。少しずつ登れる山が増えていきましたね。
-本格的に3人で登り始めてから、山選びはどのようにされているのでしょうか?
自分が登ったことのある山で、距離・標高差・コースタイムをチェックして選んでいます。登山道の様子や難所の有無などがよくわかるからです。
また、YAMAPなどのアプリで、これまで登れた山の距離・標高差・コースタイムを確認して、子どもたちの登れるところを理解しておくのも大事だと思います。
親子登山が初めてであれば、コースタイム1時間、2〜3kmくらいのルートからスタートするといいですよ。
-登ったことがない山の場合は?
遠征登山などで登ったことがない山なら、登った方の記録をネットで見て、登山道の様子などを写真で確認します。
さらに「7歳〇〇山」といった感じで検索して、同い年で登っている子の記録があれば、それも確認します。大人ではまったく問題ないけれど、子どもだと危険なところがないか……などです。最初はコース上にトイレや山小屋があることも重視しました。
-今はどのくらいの頻度で登っていますか?
最低でも月1回は登っています。多いときだと月2ぐらいですね。年長さんになった2023年には、過去最高の22回を実施しました。
今年2024年に子どもが小学校に入学して、登山頻度は落ちているものの着実に登れる難易度が上がってきていると感じています。
Nanaさんおすすめ!子連れ登山アイテム
-子連れならではのおすすめアイテムがあれば教えてください。
子連れだからといって、特別に持っていくギアは意外とないかもしれません。
ただ、やっぱり登山靴はスニーカーよりGOOD。すぐサイズアウトしてしまいますが、マストアイテムですね。ソールが固いので、登山へ行く前に街で履きならすことをおすすめします。
-子どもは成長が早いので、サイズを揃えるのが大変そうですね。
そうなんですよ。靴やキッズウェアはメルカリで購入することも多いです。モンベルも愛用していて、とくにレインウェアの『レイントレッカー』と、薄手のフリース『シャミースジャケット』は大活躍しています。
-荷物が結構あるのではないでしょうか?
はい。子どもの予備ウェアや食料も含めて、必要な物が3人分あるので、ザックは大きめを持っていきます。
とくに、ストレージサックをつなげて容量を増やせるザックは便利です。私はRawLow Mountain Works(ロウロウマウンテンワークス)の『バンビ』に、ストレージサックを付けています。
持ち物とは少し違いますが、子どもたちもそれぞれ山岳保険に入れています。モンベルの短期タイプは1回250円からとお手軽ですよ。
-子ども用の山岳保険があるんですね。
もともと自分だけ長期の山岳保険に加入していました。でも、子どもがケガして要救助者となった場合、親の保険が使えないと知り、子どもは子どもでちゃんと加入するようにしました。
-食べ物などのおすすめはありますか?
ゼリー飲料はマストで持っていきます。早朝に登山を始めるとき、子どもはいつもより早い時間に朝ごはんとなるため、なかなか食欲が出ないんですよ。そんなときは食べやすいゼリー飲料でエネルギー補給します。
熱中症対策用に塩分が入っているものもあるので重宝しますよ。
-続きは次回、またお話を伺います。お楽しみに!
ライター
yuki
幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。