日本でのクロスカントリースキー普及はいつ頃から?
紀元前から雪上の移動手段として用いられていたスキーですが、競技スポーツとなったのは1700年代終わり頃から1800年代初頭のこと。
ノルウェーで最初の大会が開催されました。
日本では、1911年にオーストリアの軍人、新潟のゆるキャラとしてもお馴染みの「レルヒ少佐」が新潟の高田においてスキー教室を開いたのがきっかけとされています。
レルヒ少佐が伝えたのは山岳スキー術で、斜面を滑降するアルペンスキーに近いものでした。
当時はアルペンスキーとクロスカントリースキーには現在ほどの違いはなく、二つを合わせたようなスキーも行われていたそうです。
その後、高田にてスキークラブが設立されたり、初めての滑降競技が行われたりして、高田が日本の「スキー発祥の地」としての地位を確立します。
実はレルヒ少佐よりも数年前に、すでにスキーは日本に伝来していて、日本の軍人が海外から持ち込んだもの、ノルウェーの王様から贈られたもの・・・国内でもそれらを参考に、自分たちの使い良いように改良した、国産スキーが作られたりしていたようです。
しかし、滑走技術をメソッドとして日本に伝えたレルヒ少佐の功績は、日本のスキーの父、と呼ぶにふさわしいものだったのかもしれません。
いつ?どうやって?競技性の高まり
クロスカントリースキーは記念すべき第1回冬季オリンピック、1924年フランス・シャモニー大会からすでに競技として採用され、男子の18km、50kmクラシカルが実施されました。(残念ながら日本はこの大会には参加していません。)
日本の豪雪地域の小学校では、冬は雪で運動場が使えなくなるため、体育の授業の一環としてクロスカントリースキーが行われるようになりました。
学校で板を用意してあるため、生徒はブーツを持参すれば滑れるという恵まれた学校もあるそうです。
校内でスキー大会が開かれ、先生よりも上手な生徒もいるとか!
こういった地域で育った子供たちは、生活の中にクロスカントリースキーがとけ込んでいて、特に大好きだったり得意だったりする子にとっては、そのまま競技へと繋がりやすいのかもしれませんね。
ちなみに、まだクロスカントリースキーでのオリンピックメダリストは日本から誕生していないので、日本初のメダリストになれるチャンスは残っています。
長野オリンピック、荻原兄弟・・・スター選手の活躍で知名度向上!
なかなかテレビなどのメディアに取り上げられないクロスカントリースキーですが、双子の日本代表として話題を呼び、オリンピックでメダルも獲得した荻原兄弟や、長野オリンピック開催による冬季スポーツへの関心の高まりで知名度は上がりました。
最近ではソチ、平昌、と二大会連続でメダルを獲得した、ジャンプとクロカンで競うノルディック複合競技での渡部暁斗選手の活躍で話題になりましたね。
ワールドカップで成績を残していても、オリンピックでメダルを獲らないとなかなか知名度が上がらないのは、クロスカントリースキーに限らずですが、知名度の高いジャンプ競技を含んだノルディック複合競技とはいえ、荻原兄弟や渡部選手の活躍はクロスカントリースキーの知名度向上に貢献したことでしょう。
競技内容としても、観戦する人がわかりやすく楽しめるように、時間差で選手がスタートするインターバルスタートだけでなく、一斉にスタートするマススタートの種目も増えました。
コンバインド競技でも周回コースが使われるようになって、観客は順位がわかりやすくよりゲームが楽しめるようになり、運営側は整備がしやすくなりました。
ノルディック複合と同じく、クロスカントリースキーが含まれる競技にバイアスロンがあります。
バイアスロンは、クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた競技。
狩猟や雪中戦、森林警備の技術から広まったこの競技、日本では主に自衛隊の隊員が活躍していて、長野オリンピックでは高橋涼子選手が6位入賞という成績を残しました。
ジャンプや射撃は気軽に挑戦しにくい面もありますが、クロスカントリースキーは最近トレイルランナーの間でオフシーズンのトレーニングとして人気が高まっているようです。
持久力や筋力のアップに加え、スキー板で颯爽と雪上を走る気持ちよさは、トレランとも親和性が高いのでしょうね。
現在の競技人口や大会の種類は?
日本国内でのクロスカントリースキーの競技人口は、日本の人口の減少に伴って減少傾向にあります。
雪国の子供たちが子供の頃親しんだクロスカントリースキーも、中学や高校になると機会が少なくなり、社会人クラブチームの数も少ないのが現状です。
クロスカントリースキーを続けるには旅費や道具代などの費用が多くかかり、知名度もあまりないためメディアに露出しての宣伝効果も見込めず、企業も力を入れない傾向です。
加えて温暖化によって、標高の高い地域以外では雪の降る時期が短くなり、練習の環境に恵まれなくなっているのです。
日本でクロスカントリースキー競技人口が多いのは、北海道、新潟、長野などの積雪が多い地域で、他にも青森(大鰐)、秋田(鹿角、花輪)、岩手(田山、雫石)、山形(田沢、蔵王)、福島(猪苗代)、富山(たいら)、岐阜などでは学校や町内にクラブがあり、大学ではサークル活動としてクロスカントリースキーが行われることもあるそうです。
クロスカントリースキーの競技の種類としては、1~1.5kmの短距離で競うスプリント競技から、10km、15km、30km、50kmといった長距離を競うロング競技、リレー競技もあります。
競技によって滑り方も変わり、スプリント競技でよく使われる、短めの板をスケートのように足を開いて滑らせるスケーティング走法(フリー走法ともいう)と、長めの板を雪上の二本の溝の中を歩くように滑らせるクラシカル走法との2種類の走法があります。
選手達はスケーティング用とクラシカル用の2種類の板を、トレーニング用とレース用と分けているため、最低でも4本の板を持っているそうです。
クロスカントリースキーのレースを観る機会があったら、滑り方や板の違いに注目してみるとより楽しめるかもしれませんね!
日本国内でのクロスカントリースキーの普及と競技について調べてみると、スポンサー獲得の難しさや競技を続けるためにかかる費用などの問題と、人口の減少や地球温暖化など、社会・環境問題が関わってくることがわかりました。前者はクロスカントリースキーならではかもしれませんが、後者は他のスポーツ競技にとっても今後影響してくる問題かもしれません。雪に親しむ子供たちが大きくなってもクロスカントリースキーを続けられる国であることが、クロスカントリースキー競技でのメダル獲得への条件のひとつかもしれませんね。
ライター
Greenfield編集部
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