なぜ、耳抜きが必要なのか?
誰にでもエレベーターや飛行機に乗った時など、耳が痛くなったり不快感を覚えたりすることがあると思います。
この不快感は人間の耳の奥にある空間と大気圧の圧力差が原因ですが、口を大きく開けたり、鼻から強めに息を出したりすることで簡単に解消できますね。
この普段何気なく行っている行為が「耳抜き」で、何の意識をしなくても自然と耳抜きをしてしまっている人も少なくありません。
つまり、日常生活のなかで耳に不快感を覚えることなく過ごせている人なら誰でも耳抜きができるということです。
ただし、水は空気よりもずっと重たいため、水中では陸上よりも圧力差が大きくなり、耳に感じる不快感も大きくなってしまうのです。
そのため、ダイビング中は強制的に耳の空間に空気を送り込んで耳抜きをする必要があります。
正しい耳抜きの方法
耳抜きにはいくつかの方法がありますが、最初に覚えておきたいのが「バルサルバ法」と呼ばれる耳抜きのやり方です。
バルサルバ法は、鼻をしっかりとつまんだ状態で、ゆっくりと鼻から息む方法です。この行為によって、空気が耳管(じかん)を通って強制的に耳の空間に送り込まれ、内圧と外圧を均衡させます。
息む力は強すぎても弱すぎてもいけません。3~4秒かけて適度な力で息むことがポイントです。
強く息むと耳の奥でポンッといった音が聞こえることがありますが、そこで耳抜きを止めてしまうと鼓膜が完全に膨らみきっていないため、何度も耳抜きが必要になることがあります。
反対に息みが弱すぎると、耳の空間に空気を送り込むことができません。ゆっくりと力を入れながら耳抜きをすることで音はしなくなりますし、確実に耳抜きができた状態になります。
耳抜き不良の原因
耳抜き不良の原因の多くは、鼻腔や副鼻腔の炎症で耳管がつまってしまい、耳の空間に空気が送り込めないことです。風邪や鼻炎のときは耳抜きができないためダイビングを中止する必要があります。
また、寝不足などで体調が悪い時も耳抜きができないことがあるので、ダイビング前の体調管理をしっかりと行うことも大切です。
稀に慢性的な中耳炎や耳管が狭いために空気が送り込めないという人がいますが、これは特別なケースであり医師にもとで専門的な治療を受ける必要があるでしょう。
耳抜きのコツとタイミング
ダイビング中に耳に痛みを感じてから耳抜きをするのは良くありません。
なぜなら、水圧による体積の変化は、水深10メートル以内が一番高くなるため、浅いところほど頻繁に耳抜きをする必要があるからです。
付け加えるなら、水深10メートルを超えれば、耳抜きをする頻度はどんどん少なくなっていきます。つまり、耳抜きをするタイミングは、潜降を開始して頭が沈んだらすぐに始めることが重要なのです。
耳抜きが苦手な人は、水深5メートルに達するまでは50cm沈むごと、5~10メートルに達するまでは1m沈むごとに耳抜きをするくらいのタイミングを意識するのが良いでしょう。
耳抜きのコツ
実は、耳抜きのコツは十人十色。AさんにはAさん、BさんにはBさんに合った耳抜きの方法があるということです。そのため、さまざまな方法を試しながら、自分に合ったコツを見つけることが重要です。
耳抜きが苦手な人は、以下の方法をいろいろ試して、自分なりのコツを掴めるようにしましょう。
- 潜行中はこまめに耳抜きをする。
- 浅い深度に戻って耳抜きをやり直す。
- 焦らずに自分のタイミングで耳抜きをする。
- 一呼吸おいてから、落ち着いて耳抜きをする。
- 一方の耳が抜けない場合、抜けない側の耳を上に向ける。
- マウスピースを強く噛まず、耳の後ろ周りをマッサージする。
- 陸上でさまざまな耳抜きの方法を試しておく。
- ダイビング前日に十分な睡眠をとる。
耳抜きの練習法
それでも耳抜きが苦手という人は、オトヴェントを使って自宅で耳抜きの練習をしてみることをおすすめします。
オトヴェントとは、もともと滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)の治療を目的につくられた医療用のゴム風船でしたが、現在は耳抜き練習用風船として一般の人でもインターネットで購入することができるようになりました。
- 滲出性中耳炎…鼓膜の奥にある中耳腔という空間に、液体がたまっている中耳炎のこと。
練習のやり方は、鼻息で何度もオトヴェントを膨らませて、息む感覚を覚えるというものです。ただし、一気に大きく膨らませるのは禁物です。
オトヴェントは耳抜きに必要な圧で膨らむので、4秒かけてグレープフルーツ程度の大きさまで膨らませ、そのまま1秒キープし、元に戻すように行います。
この練習を何度も繰り返して、耳抜きの感覚を体で覚え込ませることが大切です。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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