アウトドアで遭遇する危険生物
自然豊かな山奥や海辺などのエリアでアウトドアを楽しむ以上、街中とは異なる生物との遭遇は避けられません。
とくに野生動物との遭遇は、人が自然の中に踏み込む以上、避けることはできません。
それは、キャンプ場やハイキングなど、ファミリーで楽しむアウトドアでも同様です。
今回は、キャンプやハイキング、登山などで遭遇する可能性の高い動物の中でも、危険度の高い5種類の生物について、その特徴や対処法についてご紹介します。
クマと人の距離が近くなった原因
アウトドアで出会う危険な野生動物の代表が、クマでしょう。
近年、クマが街中に現れたというニュースが増えていますが、その原因のひとつはクマのエサとなるブナやナラの凶作といわれています。
クマがコナラやクヌギなどの実(ドングリ)を求め、人里に降りてくるケースが増え、人とクマが遭遇しやすくなりました。
森の中のエサが不足していると、人里近くの畑などに出没します。
クマの習性と遭遇した際の対処法
人の気配があれば、クマのほうからは近寄ってきません。
音を立てることが有効とされ、クマ鈴などが有名ですが、人のしゃべり声がするラジオはより効果的とされます。
それでも、エサ取りに夢中になっているクマと出会い頭に遭遇することもあります。
その際に、最大のポイントは、クマを刺激しないことにあります。
悲鳴を上げることもクマにストレスを与えるため、落ち着いて以下の行動をとります。
- クマを見かけても、背中を見せずに落ち着いてそのまま後ずさりして距離をとる。
- クマと遭遇しても、大声を立てたりカメラのストロボをたいて驚かせないこと。
- 万が一、襲ってきた場合に備えて、クマ撃退用催涙スプレーを携行する。
背中を見せて走って逃げるのは、逃げる物を追いかけるクマの習性を刺激するため最悪の対処方法です。
刺激せずに、静かに、ゆっくり距離をとることがクマと遭遇した際の最善の対処法といえます。
ニホンジカと遭遇して発生する事故
ニホンジカは奈良公園の人に慣れた群れが有名ですが、本来は山奥に生息する野生動物です。
夜行性の動物のため、日中にキャンプ場周辺やハイキングルートで遭遇することはほとんどありません。
また、オスの成獣の体重は50~130kgと大きな草食動物ですが、臆病なため山中で出会い頭に遭遇してもこちらを襲ってくるようなことはしません。
しかし、近年生息域のエサ不足から、人里近くでも出没するようになりました。
シカが人里近くに現れる場合、もっとも危険な遭遇は車の移動時です。
日没後や夜明け前後はシカに要注意
キャンプ地に向かう際に、渋滞を避けるため深夜や早朝に到着することもあります。
しかし、その時間帯は、標高が高いキャンプ場周辺の道路などで、シカが深夜から早朝にかけて移動する時間と重なります。
事故を起こしやすいのは、深夜から早朝にかけて、霧が発生している状況です。
視界が悪いなかで、車の出現に驚いたシカが道路に飛び出し、車と衝突する事故は多く発生しています。
また、ドライバーも眼前にいきなりシカが出現し、避けようと急ハンドルを切り、ガードレールに衝突したり道路をはみ出したりするケースもあります。
シカとの事故を避ける対処法
日没前後から早朝にかけての時間帯で、山間部を走行する際は以下の点に注意します。
- 「野生動物飛び出し注意」の標識を見かけたら、速度を落とし注意深く運転する。
- 対向車がなければ日没後から早朝までは、ハイビームを点灯し早くシカを見つける。
- シカは群れて行動するので、一頭見かけたら徐行運転する。
「野生動物飛び出し注意」の標識を見かけたら、シカ以外の動物も多く生息しているエリアです。
野生動物たちとの交通事故と防ぐためにも、スピードは控えめにして注意深く運転してください。
深夜にキャンプ場を荒らすタヌキとキツネ
自然が豊かなキャンプ場周辺で、もっとも多く人と遭遇する可能性が高い野生動物はタヌキとキツネです。
どちらも夜行性のため、滅多に人と出会うことはなく、遭遇しても襲ってくることはありません。
タヌキは元来人里近くの里山で多く見られる動物ですが、キツネはタヌキより警戒心が強く、滅多に人前に姿を現しません。
しかし、キツネのエサとなる小動物が少なくなると、人の生活圏に近づきゴミの残飯なども狙うようになります。
タヌキとキツネが、深夜にテント周辺に現れて食材や食べ残しを荒らすのは、好奇心旺盛で学習能力も高く、キャンプ場にエサとなる食材や残飯があることを知っているからです。
タヌキとキツネの対処法
キャンプ場にチェックインする際に、まずキャンプ場スタッフにタヌキやキツネの被害があるか確認し、その上で対処法を施します。
- 食材は屋外に放置せず車内で保管する。
- ゴミや残飯は密封して車内に入れる。
- 駐車場が離れている場合はロック可能なクーラーボックスなどに食材を入れる。
タヌキやキツネは食材やゴミ荒らしをするだけでなく、ノミやダニのお土産を残していくこともあり、テントサイト周辺に近寄らせないことが重要です。
激しい痒みと痛みをもたらすブヨ
人を刺す害虫は数多くいますが、刺された場合の被害(痛みや痒み)の激しさでは、ブヨ(ブユ、ブトともいう)はもっとも注意したい虫です。
体長は3~5mmほどで、一見小さなハエのように見えますが、哺乳類から吸血する害虫です。
刺された直後は痒みもありませんが、時間が経つにつれ患部が赤くドーム型に腫れ上がり、激しい痛みと痒みなどの症状が現れます。
ブヨに対して体質的に弱い際は、腫れが引かずに慢性的な痒みをもたらすこともあります。
ブヨに刺されない対策
ブヨは、渓流に近い草むらに生息し、山間部のキャンプ場で多く見かけます。
夏場は気温の低い朝方や日没後に活動するため、その時間帯に刺されない対策を施すことが重要です。
刺されない最大の対策は、肌を露出させないことです。
ブヨが刺すのは、腕や足首のあたりなので、ブヨの活動時間帯は長袖や長ズボンを着用します。
虫刺され防止スプレーも有効ですが、効能書きに「ブヨ」と記載されているタイプを選びます。
ブヨに刺された場合の対処法
ブヨに刺された場合は、ポイズンリムーバーで極力早く毒を吸い出し、抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏で処置します。
ポイズンリムーバーがない場合は、指で患部をつまみ毒を排出しますが、それなりの痛みも伴います。
小さな子どもがいるグループでは、毒虫対策としてポイズンリムーバーは必須アイテムといえます。
キャンプやハイキング、登山などのアウトドアの醍醐味は、自然の豊かさに触れることにあります。ただし、自然の恵みがあるからこそ、野生動物の営みもあります。野生動物の生態を理解し、彼らの営みに必要以上に踏み込まず、アウトドアライフを安全に楽しみましょう。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。