登山用非常食とはどんな役割?
非常事態に備えるための食料
登山用非常食とは、登山中の非常事態(遭難)に備えるための食料です。
登山中に非常事態に遭遇することは、日常生活におけるそれよりもはるかに確率が高く、実際、日本各地の山で現実に起きていることだということを理解することが重要です。
トラブル発生時を想定して用意しておく
たとえば、登山中に天候悪化やケガや病気などといったトラブルが発生した場合、予定していた計画よりも大幅に遅れてしまうことがよくあります。計画が遅れることで発生してくるのが、食料や水不足の問題です。
登山中に、どういったトラブルが発生しやすいのか、そのとき、どのように対処するべきなのかを、あらかじめ想定しておかなければなりません。
非常食を用意することは、登山中におけるさまざまなトラブルについても考える機会となります。
登山用に求められる非常食の栄養や量は?
非常食の栄養成分は糖質がおすすめ
人が必要とする栄養成分はおもに、糖質(炭水化物)、脂質、タンパク質の3つがあります。
この3つの栄養成分のなかで、もっとも高カロリーなのは脂質です(1gあたり約9kcal)。糖質とタンパク質はともに1gあたり約4kcalの熱量を生みだします。
糖質は体内に吸収されてすぐにグルコース(ブドウ糖)というエネルギー源になるのに対して、脂質やタンパク質の場合は、エネルギーになるまでの消化吸収に時間がかかります。
そのため、助かるかどうか数日が勝負となる登山中の遭難では、短時間でエネルギー(身体の熱源や活動源)となる糖質がもっとも有効です。
非常食は 1日〜2日分を用意する
登山の際に、どのくらいの量の非常食を用意するべきなのかは、登山日数に応じて変化します。
登山遭難は長期におよぶケースも少なくありませんが、遭難して救助隊が到着するまでの1日〜2日分の非常食を備えておくのが一般的です。
用意しておくべき具体的な非常食の量については、以下の表で紹介します。
日帰り登山 | 2食分の非常食(翌日の朝まで) |
1泊2日の登山 | 4食分の非常食(1日とその翌日の朝の分) |
2泊3日の縦走登山 | 6食分の非常食(2日分) |
また、登山用の非常食は行動食とは別にして、小分けしたものをジプロックなどに入れてパッキングするのがおすすめです。
このとき、外箱などの過剰包装はあらかじめ除いて、軽くするようにしましょう。
登山用の非常食を選ぶポイント4つ
登山中に遭難した場合、救助隊が到着して救助されるまでの間、生命を確保しておく方法を最優先に考えるべきです。
長期間におよぶ遭難事故もありますが、助かるかどうかは、数日が勝負。数日間を生き延びるためには、どのような非常食が適切なのか紹介します。
①糖分の多い食材
山で遭難したときは、効率良くエネルギーに変わり活動源となる食べ物がおすすめ。糖分の多い食材は、早く体内に吸収されて、エネルギー源【グルコース(ブドウ糖)】となります。
登山用の非常食はできるだけ糖分の多い食材を選ぶようにしましょう。具体的には、チョコレート、キャラメル、カステラ、羊羹、クラッカー、ビスケットなどがあります。
②軽くて携帯しやすい食材
登山の際に携行する非常食は、持ち歩いても体力を消耗しない軽いものを選ぶことがポイントです。
③袋をあけてすぐに食べられる食材
遭難したとき、どのような状況下でも食べられることが非常食の必須条件です。袋をあけたらすぐに食べられる非常食を備えるようにしましょう。
④腐りにくい食材
登山用の非常食は、工程中になにも問題がなかったら持ち帰るのが基本です。そのため、何度も使える腐りにくい消費期限の長い食材を選ぶようにしてください。
登山におすすめの非常食
登山のときに携行しやすいおすすめの非常食を紹介します。
大塚製薬 カロリーメイト
糖質を中心に脂質やタンパク質などの栄養素をバランスよく配合しています。1gあたり約5 kcal。
有楽製菓 ブラックサンダー
1gあたり約5.3 kcalと、非常にカロリーが高いため、登山用の非常食に最適です。
森永ミルクキャラメル
水あめや加糖練乳、砂糖、加糖脱脂練乳といった糖質を中心に、植物油脂、小麦たんぱく、バターなどの脂質やタンパク質がバランスよく配合されています。1gあたり約4.1 kcal。
ソイジョイ
栄養バランスにすぐれ、とくに大豆由来のタンパク質を多く含むため、登山中の筋肉痛の緩和にも役立ちます。味のバラエティーが豊富で食べやすいのが特徴。1gあたり約4.7 kcal。
スニッカーズ
糖質や炭水化物を中心に、タンパク質、ビタミン類がバランスよく配合されています。とくにビタミン類は、登山中の疲労回復に効果的です。1gあたり約4.9 kcal。