カメムシは、生きもの探しをしている子どもが出合いやすい、身近な虫のひとつです。思わず「触っちゃダメ」と言ってしまう親も多いかもしれません。「臭くて厄介な虫」という印象を持たれがちなカメムシですが、生態や種類の多様さを知ると意外な魅力が見えてきます。この記事では、カメムシが大量発生する理由や見られる時期、代表的な種類や生態の魅力を紹介するとともに、においへの対策や上手な付き合い方についても解説します。
※本記事には昆虫の写真が含まれます。苦手な方はご注意ください。
カメムシは嫌われ者?臭いだけではない意外な魅力

カメムシは、「臭い」「大量発生する」「家に入ってくる」といった負のイメージをもたれやすい昆虫です。しかし、少しだけ視点を変えてみると、その魅力が見えてくるかもしれません。
身近な場所で簡単に出合える昆虫
カメムシは、私たちの身近な場所で見つけやすい昆虫です。公園や庭、街路樹、畑などさまざまな環境に生息しており、虫探しに慣れていない場合でも比較的簡単に出合えます。
虫に興味をもち始めた、先入観のない子どもにとっては、ちょうどよいターゲット。自分で「見つけた!」という喜びを与えてくれるでしょう。
また、昆虫の少ない冬季でも越冬する姿を見つけられることがあり、生きものたちの冬越しについて知るきっかけにもなります。サクラの幹の割れ目などのすき間で、集団越冬する姿は「ぞっとする光景」ですが印象的です。
種類が豊富で個性もさまざま
種類の豊富さも大きな魅力です。カメムシは世界に約 4万種、日本には1,300種以上が分布するといわれています。植物の汁を吸う種類だけでなく、アブラムシやチョウの幼虫などを捕食する種類もいます。
また、すべてのカメムシが強いにおいを出すわけではありません。においが弱い種類も知られています。
見た目も実に多彩で、鮮やかな緑色や金属光沢を持つもの、細長いもの、丸みを帯びたものなど形や色のバリエーションはさまざまです。「カメムシ」とひとくくりにできないほど、それぞれに個性があります。
カメムシはセミやアメンボのなかま
カメムシは、実はセミやアメンボに近い仲間です。「カメムシ目(別名:半翅目(はんしもく))」に属し、ストロー状の口を持ち、餌を吸うという共通の特徴があります。
また、カメムシは人には聞こえない微弱な振動を利用して仲間とコミュニケーションしているというのも面白い事実。植物の茎や葉を震わせて交信し、繁殖相手を探したり仲間と情報をやり取りしたりしているのです。
参考:
カメムシ学入門|北日本病虫研報
カメムシの化学生態学 ~カメムシとにおいにまつわるエトセトラ〜|におい・かおり環境学会誌
特集 カメムシだらけにしたろかー!|伊丹市昆虫館
カメムシが大量発生するのはなぜ?生態と発生しやすい時期

カメムシが大量発生したように感じる理由には、カメムシの生態や性質が関係しています。まずはカメムシがどのように暮らしているのかを見てみましょう。
カメムシの一生
カメムシは卵からかえった後、羽のない幼虫の姿で成長し、脱皮を繰り返して成虫になります。多くの種類は春から夏にかけて産卵し、卵から生まれた幼虫はさまざまな植物を利用して成長します。
口の形は、ストロー状。植物の果実や種子に細い針を刺して栄養を吸い取ります。果実の変形や変色、品質低下などの被害を引き起こすため、農業害虫として問題になる種類も少なくありません。
成虫になると秋頃から冬越しの準備を始めます。カメムシの寿命は種類によって異なりますが、多くは約1年で、成虫のまま冬を越して翌春に繁殖するのが一般的です。
特に9〜10月頃には、暖かく雨風をしのげる場所を求めて移動するため、家の壁や窓、ベランダなどで見かける機会が増えます。冬の間、建物のすき間や樹皮の下などでじっと過ごし、春になると再び活動を始めるのです。
カメムシのにおいの秘密
カメムシの強いにおいは、身を守るための防御手段です。敵に襲われたり強い刺激を受けたりすると、お腹付近の臭腺(しゅうせん)からにおい成分を放出します。
防御のほか、仲間同士のコミュニケーションにも利用されます。危険を知らせる「警報フェロモン」として働いたり、種類によっては集まるための合図になる場合も。
においは「パクチーを濃縮したような香り」と表現されますが、この成分には植物の葉や果実の香りにも含まれる物質があり、濃度によって印象が大きく変わります。多くの人は不快に感じる一方、パクチーが好きな人がいるように、気にならない人もいるのです。
大量発生が起こる時期
カメムシが大量発生したと感じやすいのは、夏から秋にかけてです。餌が豊富な場所や越冬に適した場所に、多くの個体が集まります。
集団でいることは、カメムシにとってメリットです。同じ植物に集まることで効率よく餌を利用できるほか、たくさんの仲間がいれば外敵に狙われる確率が一匹あたりでは低くなります。また、繁殖相手を見つけやすくなるというのも利点の一つです。
特に秋になると、冬を越すために暖かい建物や日当たりの良い場所へ飛来するため、見かける機会が増えるかもしれません。また、餌となる木の実が豊作だった年は個体数そのものが増え、「大量発生した」と感じやすくなります。
農業分野では、果樹やイネを加害するカメムシ類による被害を防ぐため、都道府県が注意報や警報を発表することがあります。
参考:
カメムシ学入門|北日本病虫研報
カメムシの化学生態学 ~カメムシとにおいにまつわるエトセトラ〜|におい・かおり環境学会誌
令和8年の果樹カメムシ類の注意報・警報発表状況|農林水産省
よく見るカメムシは?種類と特徴を紹介
姿も性質も多種多様なカメムシ。日本に生息する約1,300種のうち、私たちの身近で見かける種類から、美しい模様で人気のある種類まで、それぞれの特徴を見てみましょう。
緑色のカメムシ

ツヤアオカメムシ
ツヤアオカメムシ
体長約13〜16mm。鮮やかな緑色と艶のある羽が特徴です。広く果樹の実を吸汁し、山林だけでなく果樹園や庭木など身近な場所でよく見られます。
チャバネアオカメムシ
体長約10〜12mm。緑色の体にやや茶色がかった羽をもち、全国でみられる種です。果樹や街路樹に生息し、果実や種子を餌にしています。
茶色や黒色のカメムシ

クサギカメムシ
クサギカメムシ
体長約12〜17mm。まだら模様の茶色い体が特徴です。住宅周辺でもよく見られ、果樹やさまざまな植物を利用します。
ヨコヅナサシガメ
体長約20〜25mm。黒色の体に黒白の縁取りが目立つ大型種です。樹木の周辺に生息し、他の昆虫を捕食して暮らしています。不意につかむと、ストロー型の口で刺されることがあります。
美しいカメムシ

アカスジカメムシ
アカスジキンカメムシ
体長約15〜20mm。緑色の体に赤い筋模様が入る華やかな種類です。平地や山林に生息し、スギ、ヒノキ、ミズキなどの樹木で見られます。
アカスジカメムシ
体長約8〜12mm。赤と黒の縞模様がよく目立ちます。平地から山地の草地に生息し、セリ科植物を好みます。
参考:
新 日本の昆虫1900 (1)
カメムシ対策を知って上手なお付き合い

カメムシが大量発生する時期になると、洗濯物や家の窓などでも見かけるようになります。日常のちょっとした工夫で、カメムシとの距離を保ちながら快適に過ごしましょう。
カメムシを家に入れないための予防策
カメムシは、窓や網戸のわずかなすき間から侵入するため、網戸の破れやサッシのすき間を点検しておくと安心です。
また、ミントやオレガノなど香りの強いハーブをベランダや庭で育てるのも方法の一つ。水田で行われた試験では、ミントやオレガノの周辺でカメムシが少なくなる傾向が確認されており、補助的な対策として注目されています。
また、洗濯物に付着して家の中へ入り込むことも少なくありません。取り込む時にカメムシがついていたら、洗濯物を軽く揺らしたり振ったりして離れるように促します。激しく振ったり叩いたりして、刺激しないように注意してください。
夜間は照明に引き寄せられる種類もいるため、必要以上に屋外へ光が漏れないようにしましょう。
参考:
カメムシ防除、ハーブが「効果」 JAいなばと小矢部市、水田で実証試験 | 農業協同組合新聞
カメムシを見つけたときの対処法
室内でカメムシを見つけた場合も、落ち着いて対処すれば必要以上に恐れる必要はありません。まず、刺激しないことが重要。強く触れたりすると、防御のために強いにおいを放つことがあります。
ティッシュや紙コップなどでそっと覆い、そのまま屋外へ逃がすのが簡単です。ビニール袋や空き容器を使って捕まえるのもよいでしょう。掃除機で吸い込むと機器内部ににおいが残ることがあるため、あまりおすすめできません。
カメムシのにおいの消し方
カメムシのにおいが手や衣類についてしまった場合は、できるだけ早く対処することがポイントです。におい成分は油に溶けやすい性質を持つため、水だけでは落ちにくいことがあります。
手についた場合は、食用油やクレンジングオイルをなじませてから石けんで洗うと、においが落ちやすくなります。服についたにおいは、洗濯すれば大丈夫。また、におい成分は揮発しやすいため、ドライヤーの温風やスチームアイロンを利用する方法もあります。
ライター
曽我部倫子
東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。
子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。