初冬の四阿山(あずまやま)〜根子岳には、冬の入り口らしい静けさと澄んだ空気に満ちていました。霜がきらりと光る森を歩き出せば、凍てつく足もと――山頂から望むアルプスの山々も真っ白になり、季節が一段と深まったことに胸が高まります。うっすらと雪が積もる程度の南側とは一変、北側に回り込むと真っ白な銀世界が広がり、一年ぶりに眺める雪山の荘厳さと装備の大切さを改めて感じさせられました。この記事では、そんな初冬の縦走で感じた景色や移ろいを背景に、ルートの流れや見どころ、初冬の雪山での注意点を紹介します。
空へ溶け込む稜線——四阿山〜根子岳を歩く

四阿山(2,354m)から根子岳(2,207m)へと巡る周回ルートは、まるで空へ続く滑走路のようにのびやかな稜線が特徴で、どの季節に歩いても表情が変わります。逆ルートを選べば、同じ山でもまったく違う景色に出会えるのも、この山域ならではの楽しさです。
春は残雪の白と新芽の淡い緑が溶け合い、山全体が生命の気配に満ちていきます。夏にはレンゲツツジやウメバチソウが咲き誇り、高原らしい明るい色彩が広がります。秋になると山肌は黄金色や朱に染まり、空気は一気に澄みわたる——やがて山は薄く雪化粧をまとい、稜線は光を受けて白く輝き始めますよ。
菅平牧場コース基本情報
| アクセス | ・車:上信越道「上田菅平IC」または「須坂長野東IC」から約40〜50分
・公共交通機関:JRしなの鉄道・上田電鉄「上田駅」または「須坂駅」から上田バスで「菅平高原」下車後 徒歩40分、またはタクシー利用で菅平牧場へ |
| 駐車場 | 菅平牧場駐車場 |
| 無雪期コースタイム | 菅平牧場→小四阿→中四阿→四阿山山頂→根子岳→菅平牧場 (約5時間30分) |
季節が変わる瞬間に立ち会う──四阿山~根子岳周回の余韻
11月下旬に歩いた四阿山~根子岳周回コースの雰囲気や、土を雪が交じり合う季節感も紹介したいと思います。
朝の森に冬の気配を感じながら

車道沿いの木々はまだ鮮やかな赤や黄金に染まり、まるで秋が名残惜しそうに手を振っているようでした。けれど登山口へ向かう道には落ち葉がしっとりと積もり、足音さえ吸い込むような静けさがあります。
朝の気温は-2度。森へ入ると空気が一段と冷え、息が白く、指先から体温が奪われていくのがわかりました。
枝先には薄氷のような霜がきらりと光り、足もとにはうっすらと雪が残っています。最初の経由地、小四阿までくると路面の凍結が増え、ここでチェーンスパイクを装着。防寒着も一枚重ね、冬山に寄った装備に切り替えて先へ進みました。
稜線に出ると広がる、初冬の白いグラデーション

四阿山へ続く尾根では、天気予報とは裏腹に雪が舞い始め、風速も体感で7〜8mほどに強まりました。斜面はみるみる白く染まり、山肌には白からねずみ色、そして土の色へと続く“初冬のグラデーション”が広がります。標高差100mの間に“秋から冬へ”急激に変わっていき、まさに季節の境界線の上を歩いているような感覚でした。
一歩踏みしめるたびに雪がサクッ、サクッと小さく鳴り、振り返ると自分の足跡が滑らかな雪面にくっきりと刻まれています。強風で舞い上がった細かな雪片が頬をかすめ、首元へ入り込んでは体温で溶けていく冷たさが冬の到来を知らせてくれました。真っ白な山頂では、ときおり雲の切れ間から浅間山や志賀高原が姿を見せ、初冬らしい幻想的な景色が広がります。
根子岳で感じた厳冬期が始まる温度感
四阿山から根子岳へ向かう北側の急斜面は、これまで歩いてきた道よりも明らかに雪が深く、足首が沈むほどで、軽アイゼンがあればより歩きやすい状況です。風の冷たさもぐっと鋭くなり、頬に当たるとピリッと刺すような感覚に変わっていきます。岩場には細いつららが連なり、風が吹くたびにカラカラと小さく揺れていました。
四阿山側よりも遮るものが少ないせいか、山頂直下の斜面には風が抜ける“通り道”ができていて、体感温度は一気に真冬そのもの。雪も稜線とは違って細かく、粉雪が舞い、ジャケットの袖に白い小さな粒をそっと残していきました。
「今日のこの一歩が、冬の入り口なんだ」、季節の移り変わりならではの高揚感が胸の奥に広がります。
山頂から振り返る四阿山の稜線は、ついさっきまで歩いてきた景色とは別の季節のように淡く、ひときわ美しく映りました。わずかな標高差なのに、温度も光も雪の質も違う──山がもつ繊細繊細な季節の移り変わりを、強く実感できる周回コースでした。
初冬の雪山で気をつけたいこと

山の標高によって雪が積もり始めるタイミングはさまざまです。とくに初冬は雪が降ったり溶けたりを繰り返す不安定な時期。安全に登るために押さえておきたいポイントをまとめました。
SNSなどで前日の雪の状態を確認する
初冬は積雪量の予測が難しい時期です。山のライブカメラ・ヤマレコ・インスタなどの投稿、地元の観光協会の情報をチェックし、霜・新雪・凍結の有無を確認して登山の状態を事前に把握しておきましょう。
凍結や雪に備えて装備は“気持ち多め”にする
初冬の登山道は、土・霜・氷・雪が場所によって入り交じっているのが特徴です。前日からの夜の冷え込みで、思った以上に雪が深くなることもあります。
筆者が登った四阿山~根子岳も事前の調べでは「積雪は少なくチェーンスパイクがなくても歩けそう」と思っていましたが、実際は北側がしっかりと雪に覆われていました。軽アイゼンのほうがいい箇所もありましたが、十分に装備を持っていたこともあり、安全に歩き切れたと感じています。
土〜凍りが多い場合はチェーンスパイク・軽アイゼン(6本爪推奨)、雪が多くなった場合は12本アイゼンも準備しておきましょう。「まだ早いかな?」と思う時期こそ、迷ったら持っていくのが危険回避につながります。
・ハードシェル
・防風シェル
・レインウエア
・防寒着(ダウン or 化繊インサレーション)
・手袋は薄手と厚手2組
・冷たい風を防ぐシェル
・ヘッドライト(日没が早い)
・チェーンスパイクまたはアイゼン
防寒着は多めに。こまめに対応できる装備が大切
初冬は風の冷たさが一段と鋭く、標高が上がるにつれて体感温度が急に下がります。この時期に快適に歩くためには、こまめに着脱できるレイヤリングがポイントです。今回の登山でも、薄手と厚手の手袋を2組、フーディーとダウン、防風シェル、レインウエア上下、ハードシェルと少しオーバースペックに準備しました。荷物は重くなりますが、急な降雪や冷え込みに対応できたのがよかったです。
ライター
yuki
幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。