「子育てをしながら競技を続けられるのか」そんな想いを胸に、まえばし赤城山ヒルクライム大会2025に初挑戦しました。遠方で試走ができない不安を、家族の協力と車でのコース下見で乗り越え、タイム67分で年代別2位を獲得。この記事では、日々の忙しさのなかでも挑戦を諦めなかった筆者の準備・葛藤・そしてゴール後の達成感を振り返りながら、赤城山ヒルクライムの魅力と学びをお伝えします。
赤城山ヒルクライムとは

開催地:群馬県前橋市
距離:18.6km(全長22.6km)
平均勾配:6.6%(最大勾配9.7%)
標高差:1,238m
スタート地点:道の駅「まえばし赤城」(標高約140m)
ゴール地点:赤城山総合観光案内所付近(標高約1,433m)
赤城山ヒルクライムは、道の駅「まえばし赤城」から赤城山山頂まで自転車で駆けあがります。多くのヒルクライムレースが10km台であるのに対し、赤城山は20km超え。持久力とメンタルが問われる長さであり、最後までペースを維持できるかが最大の課題です。
このレースに初めて挑む際、多くの選手がボリューム感に躊躇うでしょう。また、1,000mを超える標高差は空気の薄さも感じ始めるため、ヒルクライム経験者であってもゴール前の苦しさを想像して不安になる人が多いはずです。実際に私もそうでした。
さらに、長い距離のレースでは、必要な栄養をいつ摂るかの事前対策が欠かせません。
ヒルクライムの魅力やイベントについては以下の記事もご覧ください。
初挑戦!エントリーしたきっかけ

赤城山ヒルクライムレースには、挑戦しようと思う魅力がありました。
①ヒルクライム力が試されるコース
赤城山ヒルクライムのコースレイアウトは私の得意な勾配で、持久力(エンデュランス)を試すのに最適だと感じました。多くのレースが激しい勾配変化でペースを乱されるのに対し、赤城山は平均勾配が比較的安定しています。
純粋に一定のペースをどれだけ長く維持できるか、逃げ場のない自分との戦いで「真の実力」を試す絶好の舞台であるコースだと確信しました。
②家族で参加しやすい
子育て中の私にとって、ヒルクライムレースへの参加は家族の協力なしに成り立ちません。
今回、自宅から会場まで往復の移動時間は車で約3時間。これは、小さな子どもを含めたレース前後の家族の負担を考えると、無理なく計画できる移動距離です。
また、このような環境を与えてくれている家族に対し、練習の成果を結果という形で家族に証明したいと、モチベーションをあげるきっかけのひとつになりました。
③女性参加人数が多い
国内で多くのヒルクライムレースが開催されているなか、赤城山ヒルクライムは女性の参加人数が多いレースのひとつです。
単に競技としてハイレベルなだけでなく、初心者からベテランまで、多くの女性サイクリストが安心して挑戦し、目標を共有し合えるコミュニティが成熟している証拠だと思っています。
私もその一員として挑戦し、新たな仲間と高め合いたいおもいが最後の後押しになりました。
以下の記事では、女性サイクリストに人気の富士ヒルクライムについて紹介しています。
いざ赤城山ヒルクライムレースへ!

家族旅行もそこそこに、本命の赤城山ヒルクライムレースへ。補給やレースの雰囲気について振り返ります。
補給(食事)はしっかりシンプルに

今回は会場近くのホテルに前泊しいつもと違う環境ですが、なるべく落ち着くように心がけました。
前日の夜は装備や補給食の確認を徹底。旅行気分を一掃し、夕飯は白ごはんに焼き鮭とシンプルイズベストで仕上げます。
レース当日は7:15出走予定だったため、早朝の4:00に朝食をとりました。内容は白米のみ。パスタなどを好む人もいますが、私はいつどこでも手に入る白米派です。
練習の成果を出し切れたレース
天候は曇りで気温は20度前後と、ヒルクライムには理想的なコンディション。会場は早朝からお祭りのような熱気に包まれ、その独特な高揚感と緊張感が入り混じる空気にワクワクしました。
しかし直前、私の相棒ともいえるGarmin(サイクルコンピューター)が作動しないことに気がつきました。試走がない上にペース配分の命綱まで失うのか?と頭が真っ白になりましたが、一旦荷物預けなどを済ませて再起動を試みた結果、なんとか回復。改めて「準備を過信するな」という気づきを得ました。
いざスタート地点へ。息子に笑顔を向けるも、すでに心拍数は高まっていました。不安を振り払うように深呼吸、「今日のために積み上げてきた練習は裏切らない」と自分にいい聞かせます。
いよいよレーススタート。周囲のハイペースにつられず、身体の調子と相談しながら慎重にペダルを回しました。常にパワーメーターの数値を意識しつつ、ペースのあう人を見つけてドラフティングを利用。前半は体力を温存しつつローテーションして、後半の坂で勝負をかける計画を忠実に実行しました。
赤城山が厳しいのは終盤です。残り数キロになると勾配が増し、脚は重く、肺は酸素を必死に求めている状態に。正直「もうペースを落としてもいいのでは」という心の弱さが見え隠れしましたが、絶対に落としてやらない!と怒りに近い感情でペダルを回し続けました。
力尽きそうになった終盤で「あと少し!」と背中を押してくれた家族の声援は、本レース最大の栄養補給となりました。
苦しいゴールラインを越えた瞬間、激しい運動の直後で過呼吸気味に。そのまま屈もうとした途端、下腹部から鳩尾(みぞおち)にかけて全体が数十秒間、激しく攣(つ)ってしまうというアクシデントに見舞われました。
つらい時間でしたが、全てを出し切った結果であり、競技者としての勲章のようにも感じられました。
結果は年代別2位

結果は67分で年代別2位。私にとって育児と両立して表彰台を目指すのは容易ではなかったため、望外の結果です。ゴール直後のトラブルはありましたが「日頃の努力は裏切らない。諦めずにできる範囲で補うのが大切」だと感じました。もちろん、家族の協力とサポートあってのことです。
表彰式では、顔馴染みのサイクリストと互いの健闘を称えあったり、新たに競技志向の女性サイクリストと知り合えたり。趣味仲間が増えるのも、レース出場の大きな魅力です。今後も、今回の結果に満足せずにトレーニングを重ねていきたいです。
試走ができないときに試した方法

ヒルクライムでは、自転車でコースを試走するのが一般的です。しかし仕事や家庭の状況によっては、試走で何度も足を運ぶのは厳しい場合もありますよね。それでもまったく情報のないまま走るのは不安。そこで今回私は車での下見と動画サイトを活用しました。
車でコースをチェック
車での下見は、勾配の変化や距離感をつかむうえで非常に効果的でした。体感的なキツさや風の影響は把握できませんが、勾配や中間地点を事前に頭に入れられたので、当日の心理的な不安を大幅に軽減できます。
家族とコースを体感し合えたり、レースでは楽しめない赤城山頂上の観光ができたりするのもよい体験でした。
一般車の交通規制が入るレースでは、下見のタイミングに気をつけましょう。
動画サイトでレースの雰囲気をチェック
YouTubeなどの動画サイトには、レースの実走動画が数多くアップされています。事前に何度もチェックして、レースの雰囲気やゴール前の勾配の厳しさなど、実際に走るイメージをつかむうえで大いに役立ちました。
限られた環境のなかであっても、こうした“デジタル試走”を最大限活用すれば、本番のシミュレーションが可能。少しでも、不安を払拭してレースに臨めます。
ライター
yomec(よめしー)
自然豊かな新潟県在住、夫婦でロードバイクを楽しんでいる自転車ライター。子育てしながらトレーニングする方法を日々模索中です。今ではヒルクライムを中心としたレースが家族旅行に。愛車はSPECIALIZEDとBROMPTON。夫婦での所有スポーツバイクはなんと8台。ファミリーでも楽しめる自転車の魅力を発信します。