縦走登山では「食事選び」が疲労度や安全性に直結します。長期縦走になると、重さ・調理の手間・栄養バランスなど、食事に関する悩みは尽きません。本記事では、縦走登山における食事の条件、計画の立て方、そして3泊4日北アルプス・雲ノ平のテント泊縦走で実際に試した食事プランを紹介。これから縦走に挑戦する方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

縦走登山での食事の条件

登山縦走 食事

3泊4日で山を縦走するのは初めてだったため、とくに悩んだのが「食事」でした。毎食しっかり食べたいけれど、できるだけ軽量化もしたい。そのバランスを考えて、持っていく食事の条件を整理しました。

軽量でコンパクトであること

登山縦走 食事

長期縦走で重要視したのは荷物の軽量化です。食料は、アルファ米・フリーズドライ食品・インスタントスープ・カップラーメンなどを中心に選びました。カップ麺などの容器はかさばるので、中身だけをジップロックに移し替えてコンパクトに。ジップロックをフードコジーに入れて食べる方式で体積がぐっと減ります。ただし、軽量化を求めすぎると、食料不足にもつながるので見極めが重要です。

短時間で簡単に作れること

雲ノ平の縦走は行程が長いため、「お湯を注ぐだけ」や「クッカーひとつで完結」できる簡単な食事が理想でした。短時間でできるものなら、疲れていても調理が苦にならず、燃料の節約にもつながります。

必要な栄養を補給できること

登山は長時間の有酸素運動。エネルギー源になる炭水化物だけでなく、筋肉回復に必要なたんぱく質や持久力を支える脂質、汗で失われるミネラル、代謝を助けるビタミンも意識すると疲れにくくなります。なるべくすべての栄養素を取り入れて、食事プランを考えたいですね。

栄養素 食べ物の例 期待できる効果
炭水化物・糖質 ご飯・パン・麺類・バナナ エネルギー源
たんぱく質 サラダチキン・プロテインバー 筋肉回復
脂質 ナッツ・オリーブオイル 持久力を支える
ミネラル・塩分 塩タブレット・経口補水パウダー 熱中症予防
ビタミン サプリメント 代謝を助ける

縦走登山の食事計画を立てる

登山縦走 食事

食料を買いに行く前に食事計画を立てておくと「持っていきすぎ」や「足りなかった」という失敗を防げます

下山までの日数+予備1食を準備

基本は「宿泊数+ 1日分」ですが、今回は山小屋食も利用する予定だったので朝4食・昼1食・夜3食+1食で準備しました。

山小屋食を積極的に利用して荷物軽減

少しでも荷物を軽くするため、昼食は山小屋の食事を取り入れる計画を立てました。雲ノ平のコースには山小屋が多く、パンやカップラーメンなどの軽食も販売されています。ただし、山小屋の食堂は14時ごろに閉まることが多く、到着が遅くなると利用できない場合もあります。事前に小屋の提供時間を調べておきましょう。

また、混雑時には売り切れてしまうこともあるため、念のため予備で1食分は持参しました。なお、山小屋では基本現金のみの支払いなので、現金を忘れずに準備しましょう。

必要なカロリーを計算する

登山で自分がどのくらい消費するのかを把握しておくと、持っていく食料の量が決めやすくなります。

カロリーの目安

消費カロリー(目安)=(体重+装備重量)×運動強度(Mets)×行動時間

例:体重60kg、装備重量15kg、縦走(Mets 7)、1日7時間歩く場合…(60+15)×7×7 = 3,675cal

上記の例では、1日4000〜4,500kcalを目安に摂取するとよいでしょう。keisanサイトで山登りの消費カロリーの計算ができるので、縦走前に計算しておくと便利ですよ。

行動食について

行動食とは歩きながらでも手軽にエネルギーを補給できるものです。山小屋での昼食を考えている場合は、時間に間に合わないことも考えて行動食を多めに持つとよいでしょう。

高カロリーで食べやすいものを選ぶ

高カロリーの行動食を選ぶことで荷物を減らせるメリットがあります。好みの味や形状の方が無理なく食べられるので、自分のお気に入りを見つけておくといいですよ。

ミネラル・ビタミンなども忘れずに

汗でミネラルが失われるため、塩タブレットや経口補水パウダーは必須。さらに、ビタミン・アミノ酸・クエン酸を補うサプリなどがあれば、疲労回復が早まり長時間の縦走も楽になります。

小分けにしてザックの取り出しやすい場所に収納

行動食は1回分ごとに小分けして、ザックのフロントポケットやサコッシュ、ウエストベルトのポケットに収納しました。ザックを下ろさず歩きながら食べられるスタイルは便利でおすすめです。

縦走登山でのおすすめ食材リスト

縦走では「軽量で手軽に食べられる」ことを優先。とくに行動食は、味にバリエーションを持たせると、長い山行でも飽きずに楽しめますよ。

主食 ・アルファ米・フリーズドライ(白米・炊き込みご飯・チャーハン・リゾット・おかゆ)
・カレーメシシリーズ
・インスタント麺(ラーメン・うどん・パスタ)
・UL弁当(ご飯とおかずが一緒になっているドライフード)
・パン
・クラッカー
・グラノーラ
・粉末マッシュポテト
主菜 ・フリーズドライのおかずや汁物(親子丼・牛丼の具・豚汁)
・サラダチキン(真空パックのものを冷凍しておくとよい)
・フリーズドライカレーやシチュー
・魚肉ソーセージ
行動食 ・ナチュラル系(ミックスナッツ・ドライフルーツ・ようかん・甘栗・干し芋・きなこねじり)
・甘い系(チョコレートスナック・ソフトクッキー・グミ・練乳・かりんとう)
・しょっぱい系(スナック菓子・ジャーキー・カルパス)
・酸っぱい系(酢こんぶ・ソフトキャンディ、ガム)
・バー系(栄養補助バー・チョコレートバー)
・ゼリー系(エネルギーゼリー飲料・アミノ酸サプリメント・マルチビタミン)
・アメ系(塩タブレット・キャンディー)
その他 ・塩(味気ないときに)
・オリーブオイル(料理にコクをプラス)
・乾燥野菜(スープや麺類に入れると栄養補給に◎)

実際の食事プラン(北アルプス・雲ノ平3泊4日テント泊)

登山縦走 食事

筆者が8月中旬に実践した食事プランです。上記の計算式をもとに筆者の必要なkcalを計算すると、体重45kg、装備重量11kg(かなり軽量化しています)、縦走Mets 7、1日7時間ほど歩くので、(45+11)×7×7= 2,744kcalです。

必要kcalを約2,700kcal前後を想定し、お昼に山小屋食や名物グルメも取り入れつつ調整しました。縦走を終えたときには、予備の1食と行動食が少し余った程度だったので、食事計画は成功と言えるでしょう。

1日目
 朝 おにぎり(ひじき・梅)大2個+アミノサプリ(約420kcal)
 昼 鏡平山荘の牛丼+かき氷(約800kcal)
 夜 サタケのきのこパスタ+双六小屋のおでん&生ビール(約600kcal)
行動食 ドライフルーツ(マンゴー、アプリコット、パイナップル)・ミックスナッツ・グラノーラ・どら焼き・トレイルバー2つ・即効チャージ(ゼリー)・ビタミンサプリ・塩分チャージ・アミノサプリ(約1,000kcal)
合計 2,820kcal
2日目
 朝 惣菜パン+野菜スープ(約360kcal)
 昼 山小屋でご飯を食べる予定でしたが、間に合わなかったので、惣菜パン+サイダー+行動食:ドライフルーツ(マンゴー、アプリコット、パイナップル)・ミックスナッツ・グラノーラ・じゃがりこ・トレイルバー2つ・即効チャージ(ゼリー)・ビタミンサプリ・塩分チャージ・アミノサプリ(約1,240kcal)
 夜 アルファ米+フリーズドライカレー+缶ビール(約700kcal)
合計 2,300kcal
3日目
 朝 フリーズドライおかゆ+水晶小屋の「力汁」(約3000kcal)
 昼 カレーメシ(台湾ご飯味)+ミートパスタ+サイダー+三俣山荘のチーズケーキ半分(約760kcal)
 夜 京うどん+カルボナーラ半分+スナック菓子(約550kcal)
行動食 ドライフルーツ(マンゴー、アプリコット、パイナップル)・ミックスナッツ・グラノーラ
・トレイルバー2つ・即効チャージ(ゼリー)・ビタミンサプリ・塩分チャージ・アミノサプリ(約800kcal)
合計 2,410kcal
4日目
 朝 パンスープ+クラッカー(約270kcal)
 昼 鏡平山荘で味噌ラーメン+わさび小屋でオレンジ(約630kcal)
行動食 ドライフルーツ(マンゴー、アプリコット、パイナップル)・グラノーラ・トレイルバー(約200kcal)
合計 1,100kcal
事前にしっかり食事計画を立てれば、体力管理がしやすく、不安も軽減されます。「軽量・簡単・栄養重視」の3点を意識しながら、自分のルートや日数に合わせた食事ブランを考えてみましょう。山での食事が楽しみになれば、縦走そのものがもっと充実しますよ!

yuki

ライター

yuki

幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。