「畑やらんか!」の声で始まった農地開拓
2023年8月、海の近くの田舎に移住して、その2ヶ月後の10月には農地となる土地を手にしました。ここでは、その経緯をお伝えします。
幸運は草取りのお手伝いから始まった
夏の終わりに移住してから、やっと周囲の環境にも慣れてきた10月。ある天気の良い日に外へ出てみると、自宅の前の空き地で草取りをしている老夫婦がいました。
「お手伝いしますよ!」と声をかけて一緒に草取りをしていると、自然と打ち解けていきました。そこで私が畑をやりたい夢があることを伝えると、ご主人は「お前、畑やらんか!」と言ったのです。
私はやりますと即答。そこから念願の家庭菜園生活がスタートしました。
開墾が終わるまでひと冬かかった
土地を借り受けたものの、畑に関してまったく知識のなかった私は、とりあえず動画を何本か見てみました。
YouTubeなどでいろいろ調べてみたところ、どうやら畑づくりのスタートは、砂利などの瓦礫の撤去からということを発見。とりあえず見よう見まねで始めてみます。
しかし、借り受けたのは元宅地です。スコップで少し掘り返せば砂利はもちろん、陶器のかけら・ガラス・鉄屑・魚の骨などが出てくる荒地。結局、開梱が終わったのは、ひと冬を越した頃でした。
畑の開墾作業の流れ
いよいよ畑の開墾作業が始まりました。ここでは体験記をお伝えします。
スタートは巨石との戦い
開墾の手順はいたって原始的です。穴を掘って、掘った土を積み上げる。次に、土をふるいにかけて穴に埋め戻す。この作業をひたすら繰り返します。
まず穴掘りがすごく大変でした!ただ掘るだけでも重労働ですが、頻繁に地中の巨石に当たります。巨石といっても20〜50cm程度の石ですが、これを取り除くのはかなりの力仕事でした。
ハンドサイズのふるいで根性の開墾
穴掘りの次は土の異物除去です。手で取れる石や異物はその場で除去していきますが、それでも積み上がった土にはたくさんの異物が残っています。これをふるいにかけていきます。
私が使ったのは、直径30cmほどのハンドサイズのふるい(画像参照)。これに掘った土を入れて、さらに振るった土を畑に戻します。ふるいの目は結構細かく、1cmを超えるような砂利や異物は取り除かれます。砂利は石置き場に戻し、残りはゴミとして処分しました。
私は、畳約4畳分の面積(6.18平方m)を約80cmの深さまで掘りました。ざっくり計算すると、約5,000Lの土をふるいにかけたことになります。
(計算式見本 6.18m2×0.8m=5000L)
荒地が上質な畑へと大変身
土を掘って瓦礫を取り除き、ふるいにかけるだけで、土がこんなにも変わるのかと驚いたのが人生初開墾の感想です。
ふるいをかけ終わった土の上には、たくさんの羽虫が飛んできて、土が明らかに生気を取り戻しているのを感じました。石だらけでカチカチだった土地が、フカフカの畑に生まれ変わった瞬間は感動しました。
籾殻を大量にぶちまけてさらに改良
ひと冬かけて開墾をし、終わったのが春前。種を植えるにはまだ早いので、畑をよりよい状態するにはどうしらたよいかと考えていたところ、とある動画を見つけました。
その動画では、籾殻(もみがら)を土にすき込んで土壌改良をしていました。籾殻はその形とかたさから、土の中に空気と水を保つのに最適で、微生物のすみかにもなるそうです。後々植える植物の栄養素も含んでいて、さらに無農薬ということで、籾殻を使うことにしました。
近隣の道の駅で籾殻を買ってきて、畑へ盛大にぶちまけました。量にして約200L、大量の籾殻を土にすき込んでいきます。
籾殻以外にも、くん炭も50Lほどすき込みました。くん炭とは、籾殻や木屑を蒸し焼きにした土壌改良剤です。腐食性の微生物や細菌、カビなどの繁殖を抑えてくれます。
私が体験した開墾作業の手順をまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。
- 穴を掘る
道具はスコップで十分です。私は80cm掘りましたが、家庭菜園ならば40cm程度で構いません。 - 大きな石を取り除く
元宅地にはかための石がたくさんあったため、手で石を取り除きました。ここは開墾作業の難所です。 - 土をふるいにかける
かたまっていた土もふるいにかけることで、キメの細かい土に生まれ変わります。 - ふるいに残った異物を取り除く
元宅地なので、石のほかにも鉄屑やガラス・陶器などのゴミもあります。ふるいにかけることで異物をほぼ取り除けます。 - 土を畑に戻す
畑の上でふるいを振って、土を畑に戻す。この瞬間に土が生まれ変わります。 - 籾殻くん炭・米糠をすき込む
土壌改良のために籾殻くん炭と米糠を土に混ぜ込みました。
ど素人が畑を始めてみた感想
ここからは未経験の私が開墾から始めた家庭菜園の感想とメリットをお伝えします。
無心で掘ってしまう穴掘りの中毒性
穴を掘るのは重労働ですが、人間の根幹部分に響く本能的な作業なのではないかと思います。掘っていると無心になり、なにも考えずに体を酷使することが快感になっていきました。
移住して間もない頃だったのでいろいろと不安もありましたが、穴掘りをすることで気持ちが落ち着いたのをよく覚えています。
土がよければ野菜は育つことを実感
最初の収穫前の写真です。育てているものは、下記のとおりです。
- 里芋
- ニラ
- ネギ
- なす
- アスパラ
- 大葉
- ローズマリー
- ツルムラサキ
- かぼちゃ
苗を植え付けてからは、どの野菜もほとんど肥料もやらず、水やりだけの手入れでしっかり育ちました。
初めてにしては上出来の家庭菜園です!土を深く掘ったこと、土を丁寧にふるいにかけたこと、水やりをかかさなかったことが成功の秘訣だったのかもしれません。
移住者にとって畑は地域交流のきっかけ
畑を始めて一番よかったことは、地域の方々と話すきっかけができたことです。穴掘りを始めた頃から、近隣の方々が通りかかるたびに声をかけてくれて、野菜のことや天気のことなどいろいろ教えてくれました。
画像に写っているのは畑の師匠です。土づくりから野菜の育て方や美味しい食べ方、雑草のさまざまなことを教えてくれました。
私の畑は、地域の皆さんがよく通る道沿いにあります。いずれは、この畑を地域交流の場にすることが今の夢です。
ライター
いしいあきら
茨城の田舎町からギター片手に上京。特に音楽をやるわけでもなく出版業へ。読書ばかりしていた暗い青春時代が生きる。それなりに本を作ったり雑誌を作ったり楽しくすごす。しかし、その素性は田舎っぺ。年々、自然への憧れが強くなり、3年前にうっかり移住。海と猫と老人に囲まれ、幸せな毎日を送る。好きな果物はいちご。