環境再生型農業とも呼ばれる「リジェネラティブ農業」。世界的に有名な大企業も取り組む農法です。毎日、農作物を食べているわたしたちにも無関係ではありません。本記事では、リジェネラティブ農業について説明し、国内外の現状や企業の事例もご紹介します。

リジェネラティブ農業について

リジェネラティブ 農業

リジェネラティブ農業は環境に配慮して作物を育てます。「リジェネラティブ(Regenerative)」は、日本語で「再生させる」という意味。そのため、日本では「環境再生型農業」と呼ばれることもあります。

どのような農業のことなのか、詳しく見ていきましょう。

リジェネラティブ農業が生まれた背景

リジェネラティブ農業が世界的に注目されている理由は、農薬や化学肥料をつかう従来の農法では、土壌が劣化してしまうためです。

不健康な土壌では、とれる作物の質が低下します。また、土壌にCO2を蓄えられないため、大気中に放出されて、地球の温暖化につながるのも問題。また、農地に人工的に手を加えすぎた結果、自然の生態系も壊されてきました。

こうした農法に対して、有機農業を研究するアメリカの研究機関「ロデール研究所」が、1980年代に「リジェネラティブ農業」という農法を提唱したのです。

リジェネラティブ農業が目指すもの

リジェネラティブ農業では、長く継続できるサステナブルな農業を目標とします。

これまでと同じ農法で土壌が汚染されつづけると、環境へのダメージになるだけではありません。疲弊した土壌では、食料を安定して生産するのが難しくなる可能性も。世界的に人口が増えつづけるなか、食料危機の問題は深刻で、長期的な視点に立った農業が必要とされています。

リジェネラティブ農業では、土壌を改善して自然環境を回復させるのと同時に、食の安全を保ちながら、生産性を高めることも目指していますよ。

リジェネラティブ農業の農法

土壌を健全に管理し、生態系や農地を修復するのがリジェネラティブ農業です。たとえば、除草剤・殺虫剤・化学肥料はつかいません。代わりに、似た働きをする昆虫や、家畜の糞尿を用います。

また、耕さない「不耕起栽培」も、リジェネラティブ農業のひとつです。不耕起栽培では、作物を栽培するときに農地を掘り起こす行程を省きます。耕さないことで、作物に必要な土壌中の生物や、その餌となる微生物を守れますよ。

有機物に富んだ土壌は、化学肥料に頼らずに作物が育てられるうえ、地球温暖化の原因となるCO2を蓄えられるのもメリットです。さまざまな観点から、リジェネラティブ農業は環境にやさしい農法といえるでしょう。

リジェネラティブ農業の現状

リジェネラティブ 農業

リジェネラティブ農業の普及状況は、国によって異なります。リジェネラティブ農業の現状を日本と海外にわけて見ていきましょう。

日本では普及が遅れている

日本国内ではリジェネラティブ農業があまり浸透していないのが現状です。その理由には、「農地の面積」と「作物の病気への懸念」が挙げられます。

理由①:農地の面積が狭い

農業の新技術を導入するには、試験的に実践する農地が必要です。しかし、成功例が多く報告されているアメリカと違い、国土面積の狭い日本には広大な農地がほとんどありません。アメリカのような生産性の高いリジェネラティブ農業を行うには、農地面積の不足が懸念されます。

理由②:作物の病気が心配される

不耕起栽培では土壌にひそむ嫌気性菌によって、作物の病気のリスクが高くなります。これは、生産者の生活をおびやかす深刻な問題点です。

リジェネラティブ農業の導入は魅力的ですが、失敗のリスクもともないます。万が一失敗した場合、日本では損失をまかなうサポート体制が不十分。日本でのリジェネラティブ農業の導入は、農業で生計を立てる生産者にとってはハイリスクなのです。

日本特有の気候や土地に対応した、リジェネラティブ農業のノウハウを見出すことが浸透のカギになるでしょう。また、企業が取り組めば、環境保護への積極的な姿勢をアピールできます。今後、ビジネス戦略としての取り組みも期待されていますよ。

海外では積極的な取り組みが見られる

海外ではリジェネラティブ農業が積極的に採用されています。

たとえば、アメリカの農業団体「AFT」は、不耕起栽培や家畜の堆肥などを採用したリジェネラティブ農業で検証を行いました。その結果、収穫量が最大22%も増加。栽培コストは削減され、農家の収入アップが報告されています。肥料や薬品の値段高騰の対策にもなっていますよ。

また、世界的に有名な大企業が、リジェネラティブ農業に取り組んでいるのも注目に値します。次項でご紹介しますので、参考にしてみてください。

出典:American Farmland Trust「Soil Health Case Studies」 

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Greenfield編集部

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