1年先を見据えた今の活動と、その先の希望
ー伊藤さんのメイン業務の『マーケティング』は、広範囲にわたってお仕事がありますよね。詳しく教えてください。
1年間でいうと、基本的には1月にスキー場がオープンしたあとに、来期のスキー場の営業計画を決めます。
営業計画だけでなく、最低限の料金や営業期間なども、春の時点で決まっていないと海外に売り込みに行けません。1年後のことを、1月にはもう決めているんです。
2月と3月は、イベント運営や映像撮影などのアテンドがメインになります。この時期、雪上に出ている機会は多いですね。今年も40日弱くらいあったので。
4月になると、夏の商品をつくったり、プロモーションを仕掛けたり。5月6月くらいになってくると、来期の早割券の造成が入ってきます。秋口は全国の会場に行って、パンフレットをお配りしたり、SNSのフォロワーの促進をしたりなどですね。
僕が担っている部分をわかりやすくいうと、リフト券の現地窓口以外での、販売とWebのプロモーションを全部やらせてもらっています。
ー個人的に描いている今後の展望はありますか?
FWQとFJTに限っていうと、最終的には「ロッテアライリゾートでワールドツアーを開催してみたい」というのがあります。
自分のハンドリングでそのイベントが成功すれば、それ以上のことはないですね。現状もっているゲレンデだけだと、開催できる基準を満たしているというのは、なかなか難しいのかもしれませんが。
ーほかのスキー場と比べて、アライリゾートの現状はいかがでしょうか?
現在、アライリゾートの来場者数は、近隣のスキー場さんと比較しても全然少ないんです。雪が降らないとお客さんがこないですし。今日だって100人いるかいないか。
でも、雪が降ると、平日でもパウダー目当てに1,000人くらいがきて、ゴンドラが2~3時間待ちとかになっちゃうんです。
アライリゾートのリフト券は正規価格で6,000円。高いといわれることもありますが、正直、僕自身6,000円以上の価値のあるものを提供していると思っています。単価を上げても、おそらくそんなに来場者数って変わらないんじゃないかな。
ーコロナ禍でインバウンドのお客さんは減りましたよね。
はい。もともとうちのゲレンデは、7~8割が海外からのユーザーなんです。それがコロナ禍になって、昨年からぱたっとゼロになってしまいました。そこで、国内の方に足を運んでもらいやすいよう、早割券やディスカウントなどもはじめました。その効果は出てきています。
新潟県内でも、昨年度対比のパーセンテージで見ても、うちのスキー場は決して悪くはないんです。外国人ユーザーという主たるお客さんの大半は、いなくなっているにも関わらずです。
自分たちがやっていることを、現場のスタッフにももっと誇りに思ってもらえたらうれしいですね。
リフト券の売り上げだけで見ると、おそらく妙高エリアは国内でもトップレベルの売上と単価が取れている。でも、古きよき日本のザ・スキー場みたいな感覚があります。
海外のリゾートみたいに、もっと適正単価で満足度の高い運営ができればと思っています。このままだと安売り合戦になって、スキー場が疲れちゃうのではないかと。
ーウィンター業界のさらなる盛り上がりを期待したいところですね。
そうですね。後藤さんも、全国30か所のスキー場で使えるリフト券の定額サービス『アースホッパー』を立ち上げました。今までとは違ったスキー場の選び方ができるようになるとよいですよね。オリンピックでの平野歩夢くんとかの活躍もありますし。
実は、日本は世界で2番目にスキー場の数が多いんです。うちみたいなリゾートから町営レベルのスキー場まで、すごいいっぱいあるので。
このJAPOW(Japanとpowder snowを組み合わせた造語)といわれている観光資源は、世界にはないものです。より多くの世界中の人たちに選んでいただけるよう、さまざまなプロモーションを続けていきたいと思います。
この記事を書いた人
Yoco
山岳部出身の父のもとに生まれ、自然を相手に楽しむ事が日常的な幼少期を過ごす。学生時代は雪なし県ザウス育ちの環境で競技スキーに没頭し、気がつけばアウトドアスポーツ業界での勤務歴は20年程に。ギアやカルチャーに対する興味は尽きることなくスキー&スノーボード、バックカントリー、登山、SUP、キャンプなど野外での活動がライフワークとなりマルチに活躍中。最近ではスケートボードや映像制作にも奮闘中。