失われていく海岸線!海岸浸食の現状と対策とは?

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失われていく海岸線!海岸浸食の現状と対策とは?

国内の海岸線では砂浜がなくなる異常事態が続いています。激化する海岸浸食は年間160haにも及び、このままでは30年後に三宅島に匹敵する4,800haもの海岸が浸食され失われると警笛を鳴らします。浸食により閉鎖された海水浴場の数も全国で増え続けています。今回は海岸浸食の現状と対策を探ります。

日本の海岸線について

日本の海

日本は全方位を海に囲まれた島国です。

総延長約35,000kmにも及ぶ海岸線を持ち、これは国土面積における海岸線の割合で考えると、世界でも諸外国と比べて非常に長い海岸線を有していることになります。

例えば1㎢あたりの海岸線の長さは、アメリカ2.2km、イタリア17.0km、イギリス51.4kmなのに対して、日本は91.3kmと突出しており、日本列島を囲む海岸線が如何に長いか知ることができます。

また、海岸沿いの臨海市町村は、国内の総人口の46%が暮らし、商業経済の77%が集中していることから、海岸線は私たちの生活にも密接な関係を持つかを窺い知ることができます。

 

参照:国土交通省

 

海岸浸食がもたらす弊害

高潮被害

日本の砂浜の面積は全国で約19,000haとされていますが、この15年間で約13%に当たる2,400haほどの海岸が浸食により消失しています。

海岸線は、波の力を弱まらせることで、津波被害を防ぐ防災上の役割があります。

砂浜が浸食され無くなっていくと、波の力が遮られることなく陸地に押し寄せ、高潮被害を増幅する恐れがあります。

また海岸浸食による弊害は、海岸線を生育環境とする動植物にも影響を与えます。

私たち人間にとっても、海水浴場の閉鎖など海と触れ合う機会が失われていっています。

 

海岸浸食の現状

九十九里浜の現状

千葉

千葉県房総半島の九十九里海岸は、全長60Kmにも及ぶ砂浜が続く国内有数の海岸線でした。

漁業はもちろんのこと、釣りや海水浴などのレジャーも盛んで、特にサーフィンは2020年東京オリンピックの会場にも指定された日本屈指のスポットです。

しかしこの40年ほどで、海岸浸食がすすみ、およそ30kmの海岸線が侵食され、陸地との境となる汀線は最大100mほど後退し、現在もその範囲は拡大しています。

海岸浸食により、九十九里海岸から南下した南房総地区を含めると、海水浴場は30か所以上閉鎖されました。

これにより、海の家や飲食店などの経営も圧迫され閉店を余儀なくされています。

また、船舶の航路にも影響を与え、漁業、水産業者にも影響を及ぼしています。

 

湘南海岸の現状

神奈川

湘南海岸の海岸浸食は1960年代から目立つようになりました。

首都圏にも近いことから、砂利採掘や土木工事、相模湾に流れる河川のダム整備などの開発事業が盛んに進められたことにより、急激な海岸浸食を引き起こし、海岸線の地形すらも変わってしまっています。

近隣で漁港の建築を行った茅ケ崎海岸の浸食は特に著しく、高潮を誘発することになり、国道134号線の自転車歩行者道が津波の被害を受けることにもなりました。

また西湘バイパス下り線が、高潮により数箇所にわたって擁壁崩落路面陥没をしたこともあり、神奈川県や茅ケ崎市では、膨大な予算を組んで養浜事業を行っています。

 

宮崎海岸の現状

宮崎

宮崎県の海岸線は南北約400kmに及び、宮崎市から日向市にかけての約60kmでは、砂浜の海岸が続きます。

ウミガメの産卵地としても知られる自然豊かな土地で、サーフィンなどのマリンスポーツも盛んな地域です。

1950年代以前には、運動会や球技大会が開かれるほど広大な砂浜でしたが、現在は海岸浸食がすすみ、約40mほどの砂浜が姿を消しました。

海岸浸食の弊害により、昨今の台風の影響をさらに受けることになり、高潮による砂浜流失も続き、現在もさらに浸食され続けています。

県では、環境保護団体や市民団体とも協議を重ね、自然環境を損なわない護岸工事を中長期的に進めてはいますが、決定的な対策には至っていません。

 

鳥取砂丘の現状

鳥取海岸

鳥取県は総延長約129kmの海岸線をもち、そのうち60%が砂浜の海岸になります。

観光地といても有名な鳥取砂丘も海岸線に位置し、海岸浸食は砂丘にも及んでいます。

土木学会の調査によると、鳥取砂丘の東側の前浜は既にほとんど消失してしまっていると言います。

数万年とも言われるスケールで地球の神秘の中、形成された鳥取砂丘が、人類の乱開発により数十年という短いサイクルで失われていくことは、許されることではないと思います。

現在では、専門家や県などでつくる鳥取砂丘再生会議などが中心になり、砂丘の浸食を防ぎ元の状態に戻すための研究や活動が進められています。

 

海岸浸食の原因

ダム建設

全国で深刻化する海岸浸食の原因は、そのほとんどが人為的要因と言えます。

高度経済成長期以降、日本では山、海、川などの自然環境を変化させる建造物を数多く作りだされます。

港湾、漁港、防波堤工事などにより潮の流れを変化させ、砂の堆積する漂砂すらも変化させます。

砂が海に流れ出す河川では、上流にダムが作られ、河川敷では砂利の採掘や埋め立て工事が進められました。

このような人類の乱開発により、内陸から供給され海岸線に堆積するはずの砂が減り、海に流される砂の方が多いことになり浸食が進んでいるとみられています。

また、天然ガスや地下水の過剰採掘による地盤沈下も要因のひとつとされています。

いづれにしても、海岸浸食の原因は台風や高波などの自然的要因ではなく、経済発展のために開発を進めたことによる弊害なのだと言えるのです。

 

課題と対策

港湾工事

浸食の原因が行き過ぎた開発にあるとわかっていても、既にあるダムを壊したり漁港を解体したりすることは出来ません。

地盤沈下の原因になるとしても、地下水で生活している家庭では水がなくては生活も出来ません。

手に入れた環境を手放すことはなかなかできないのが現状ではないのでしょうか。

海岸浸食の対策は、国家的プロジェクトや地方自治体でも今まさに進められています。

消波ブロック、テトラポットの整備や土砂を海に入れるなど、さまざまな対策を講じてはいますが、まだまだ効果的に浸食を止められるところまで行っていないのが現実です。

目の前で無くなった砂浜を埋め立てるだけのミクロ的な対策よりも、漂砂のメカニズムを解析して元の自然に戻るようなマクロ的な対策が急務だと思われます。

人類が壊してしまった自然環境は、人類の英知で解決するしかないのですから。

 

 

まとめ

台風のあと、砂浜がなくなっている無残な光景を見ることがあります。海岸浸食は台風や高波の影響よりも海岸線や河川を乱開発したことによる人為的な原因が起因します。地球温暖化を筆頭に人類は様々な環境破壊を繰り返してきました。海岸浸食も私たち人類が行き過ぎた経済発展を望んだ弊害なのではないでしょうか。この問題は一人の個人で何かできるような簡単なものではありません。しかし海岸浸食の現状と原因を知ることで自然に対するリスペクトする気持ちが芽生え、植樹事業や港湾事業に理解と検閲する目が養われれば、同じ間違いを起こすことはないのではないかと思います。

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